透明脳モデルを用いた研究論文がChild’s Nervous Systemに掲載
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーは、西山健一先生、三輪点先生と共同開発した「透明脳モデル」を用いた研究論文が、2026年9月1日、国際小児脳神経外科学会(ISPN)の公式学術誌『Child’s Nervous System』に掲載されたことを発表した。透明脳モデルは、脳室と周囲の構造を柔軟な透明素材で再現し、内視鏡手術における器具の動きと脳構造の相互作用を外側から観察できる研究・手術教育用模型である。本研究では、内視鏡の画面外で発生する脳弓の圧迫や静脈構造の伸展といった変形が模型上で可視化された。
研究の概要と模型の構造
神経内視鏡手術において、術者は先端のカメラ映像を確認しながら操作を行うが、カメラより手前にある軸やシース(器具を通す筒)が脳室周囲にどう接触しているかは画面上だけでは把握できない。本研究は、この画面外の相互作用を外部から観察し、器具や経路の違いと関連付けて検討することを目的に実施された。
模型は非交通性水頭症の患者のMRIデータを基に脳室形状を再現し、透明なウレタンゲル等を用いて製作された。脳弓、静脈、脈絡叢などが色分けされ、水を満たしたアクリル容器内で内部を見通せる仕様となっている。実験では、実際の診療で使われる硬性内視鏡と軟性内視鏡を用い、前頭部および頭頂部からの経路で第三脳室底開窓術、透明中隔開窓術、脈絡叢凝固術、腫瘍生検へのアプローチを模した操作を行い、内視鏡映像と外部カメラ映像を同時に記録した。


掲載論文の詳細は以下の通りである。
- 論文名:Real-time visualization of endoscope–brain interactions using a transparent ventricular model(日本語訳:透明な脳室模型を用いた、内視鏡と脳の相互作用のリアルタイム可視化[同社訳])
- 掲載誌:Child’s Nervous System
- 掲載日:2026年9月1日
- 著者:西山健一先生、三輪点先生、白川勇仁、大野秀晃
- DOI:10.1007/s00381-026-07452-0
模型実験で観察された主な結果と検証範囲

模型上でのシミュレーションにより、以下の4点が観察された。

- 画面上で進路が確認できている状態でも、軸が脳弓を再現した前方部分を圧迫し、横へ変位させる様子が硬性・軟性の双方で確認された。
- 内視鏡を引き戻す際の弧を描く動きにより、静脈の合流部および周囲の静脈構造を再現した部分が引き伸ばされる様子が観察された。
- 硬性内視鏡の方向転換では脳室壁が大きく動き、軟性内視鏡では湾曲部が視床間橋や視床を再現した部分を圧迫するなど、器具により変形の起こり方が異なった。
- 前頭部経路で軟性内視鏡を大きく曲げた場合、側脳室下角へ処置具を十分に進められない場面があり、頭頂部経路との間で到達範囲と周囲の変形の違いが確認された。

なお、本研究は模型上での観察研究であり、患者の治療成績を調べた臨床試験ではない。模型は生体の血流や拍動を再現しておらず、合併症減少や技能向上の定量的実証や、臨床での安全性・教育効果の検証は今後の課題とされている。
開発の経緯と国内外における教育展開

開発は、手技の練習だけでなく器具が周囲に及ぼす影響を外側から確かめられる模型を求めた西山先生および三輪先生の知見と、同社の白川勇仁らによる材料選定や形状再現の技術を組み合わせて進められた。不透明だった従来の脳室内モデルから、透明性と柔軟性を両立させた模型へと改良が重ねられた。

2023年11月にシンガポールの第10回IFNE世界神経内視鏡学会で初公開され、2024年11月に日本神経内視鏡学会で国内発表された。その後、2025年2月にイタリア・ナポリの国際ハンズオンワークショップ、同年9月にオーストリア・グラーツの第11回IFNE世界神経内視鏡学会において、西山先生らが透明脳モデルを用いた実演や海外の脳神経外科医への直接指導を実施した。開発開始から論文掲載までには約5年が費やされている。
新潟県はまぐみ小児療育センターの診療部長で国際神経内視鏡連盟(IFNE)理事長を務める西山健一先生は「本モデルでは、手術操作中に脳がどのように変形・移動するのかを外側から直接視覚化することができ、手術手技の向上と安全性の確保に大きく貢献します」とコメントしている。

株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーの概要
- 所在地:東京都中央区
- 代表者:代表取締役CEO 大野秀晃
- 事業内容:最先端の3Dプリンティング技術を用いた医療用立体模型や頭蓋矯正用ヘルメット「Qurum Fit」「Qurum」「Aimet」、各種医療支援アプリの開発・製造・販売
- 実績:乳児用頭蓋矯正ヘルメットを用いた累計症例数は21,000症例以上。国内の大学病院・小児医療センターにおける頭蓋矯正ヘルメットの採用施設数は国内最多(2026年9月同社調べ)
本記事は株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーの発表をもとに作成。
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