岡山大学など、固体原子核時計の実現に向けレーザーメスバウアー分光法を開発
国立大学法人岡山大学やオーストリアのウィーン工科大学などの国際共同グループは、固体中のトリウム229原子核をレーザーで励起し、周囲の局所環境(原子の並び方)を調べる「レーザーメスバウアー分光」法を開発しました。フッ化カルシウム結晶中におけるトリウム229の存在環境を4種類識別し、その特徴を明らかにしています。本研究成果は、2026年8月20日に米国の科学雑誌「Science」に掲載されました。
物質の中で原子核がどのような環境にあるかを調べる方法であるメスバウアー分光は、これまでガンマ線のみが用いられていたため、大型装置や放射線源を必要としていました。


研究グループは、特別に低いエネルギーで励起できる原子核として知られるトリウム229に着目しました。真空紫外レーザーを用いたメスバウアー分光により、フッ化カルシウム結晶中に入ったトリウム229原子核のわずかなエネルギーの違いを詳細に観測することに成功しました。
結晶中の4種類のサイトを識別し原子配列を推定
観測の結果、フッ化カルシウム結晶中にはトリウム229が入り込むサイト(トリウム229を取り囲む原子の配置)が4種類存在することが判明しました。
さらに、それぞれの原子核の励起状態の寿命を調べ、主要な2種類のサイトについては実験データと理論計算を組み合わせることで、トリウム229周囲の原子配列を推定しました。岡山大学異分野基礎科学研究所の平木貴宏助教(特任)は、結晶の中でトリウム229がどのような場所に入りどのように振る舞っているかを原子核自身をセンサーとして利用して調べることができたとしています。



固体原子核時計の設計や物理研究への応用
今回の成果は、極めて高精度な時計である「原子核時計」、特に結晶を用いた固体原子核時計の設計に不可欠な情報を与えるものとされています。
原子核時計は、現在の原子時計を超える精度を持つ次世代の時間標準として期待されており、物理定数の時間変化などの新しい物理の発見や革新的な計測技術につながる可能性があるとされています。また、原子核物理や物性物理と量子技術をつなぐ研究基盤としての活用も見込まれています。
発表論文の概要
- 論文名:Laser Mössbauer Spectroscopy of 229Th in CaF2
- 掲載誌:Science
- DOI:10.1126/science.aea7978
- URL:https://www.science.org/doi/10.1126/science.aea7978
本記事は国立大学法人岡山大学の発表をもとに作成されています。



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