岡山大と京大、分子の官能基を変えてカーボンの構造を制御する炭素化の新原理を解明
岡山大学異分野基礎科学研究所の仁科勇太卓越教授と京都大学大学院工学研究科の生越友樹教授らの研究グループは、フェノール樹脂のモデル分子「ピラーアレーン」を用い、分子の周囲に付ける官能基を変えることで炭素化の反応経路と生成するカーボンの構造・機能を制御できることを明らかにしました。同じ分子骨格から多孔質カーボンやシート状カーボンを作り分けることが可能となり、それぞれガス吸着や電気伝導において異なる特徴を示しました。本研究成果は、学術誌「Small」に8月19日付で掲載されています。
分子構造の違いがカーボンの形状と機能を制御
研究グループは、フェノール樹脂のモデル分子として環状分子である「ピラーアレーン」を用いました。分子の周囲に結合させる官能基を変えることで、カーボンになるまでの反応経路と、できあがるカーボンの構造や機能が大きく変化することが判明しました。


実験では、同じ分子骨格から元の形を保った穴の多いカーボン、段階的に融合したシート状カーボン(層状カーボン)、一度溶けて再構成されたシート状カーボンが生成され、それぞれガス吸着や電気伝導において異なる特性を示しました。

経験則に頼る炭素化から精密な分子設計へ
これまで炭素化プロセスは経験則に頼ることが多くありました。今回の成果は、分子構造から目的のカーボン材料を設計するための新しい学理技術となります。
岡山大学の仁科勇太卓越教授は、分子の周りに付く官能基がカーボンになるまでの道筋と最終的な形や機能を左右することを見いだしたとし、将来は目的のカーボンを作るためのレシピとして設計できるようにしたいとしています。また、京都大学の生越友樹教授は、超分子化学で培ってきた分子を組み立てて形や性質を制御するアプローチがカーボン材料の設計につながったとし、身近で実用的な炭素資源へ広げたいと述べています。


未利用有機資源を活用した資源循環への展開
本研究で得られた知見は、フェノール樹脂、ピッチ、リグニン、廃プラスチック由来成分などの未利用有機物を、有用な吸着材や導電材といった高機能カーボンへ変換する資源循環技術の設計指針になることが期待されています。
論文情報
本研究成果の詳細は以下の通りです。
- 論文名:Divergent Carbonization of Pillar[5]arenes Produces Porous and Lamellar Carbon Architectures
- 著者:Tan-Hao Shi, Chen-Yi Ma, Kentaro Ohkura, Riki Kato, Tsubasa Hatanaka, Shoma Hori, Hiroo Suzuki, Shunsuke Ohtani, Kenichi Kato, Yuta Nishina*, Tomoki Ogoshi*
- 掲載誌:Small
- DOI:10.1002/smll.75161
- URL:https://doi.org/10.1002/smll.75161
本記事は岡山大学、京都大学、科学技術振興機構(JST)の発表をもとに作成しました。



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