MoMA所蔵の瓦の灰皿から1960年代日本のモダンデザイン海外展開を解明
米・ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されている日本製の瓦を用いた灰皿を手がかりに、1960年代の日本モダンデザインの海外展開を紐解いた研究論文が、英国・Taylor & Francisが発行する査読付き国際学術誌「The Journal of Modern Craft」に掲載されました。関西外国語大学のキムリー・ソンア准教授と松葉勇輝講師による共同研究の成果です。第二次世界大戦の終結から20年近くが経ち、日本が高度経済成長へと移り行く中で行われた手工芸品の対米輸出の実態や、日本のモダンデザインが日米の経済戦略の中で海外展開していく過程が明らかになりました。
灰皿に残された刻印から日米の流通経路を解明
MoMAが所蔵する日本製の瓦を用いた2点の灰皿は、民藝運動に参加した建築家がデザインし、香川の瓦職人が制作したものです。しかし、MoMAの記録には「Bonniers International Japan」による制作と記載されていました。
これに疑問を持ったキムリー准教授が、底面の「Bonniers Japan」の刻印を手がかりに松葉講師と共同研究を開始しました。製造者周辺への聞き取りや、当時の日本手工芸品対米輸出推進計画「マル手」、輸出振興策、日米間の文化交流などを調査した結果、香川県で作られた地域工芸品が輸出業者によって戦略的にアメリカ市場へ流通したことが判明しました。香川県の桜製作所での調査では、MoMA収蔵品に似た試作品を含む同タイプの灰皿が確認され、当時の品評会でA~Dに等級分けされたうち輸出に適した製品のみが出荷されていたことも分かっています。「Bonniers Japan」の刻印は、1960年代の「Made in Japan」人気を背景に、ニューヨークの輸入業者が販売のために意図的に用いたものでした。

異なる専門性を活かした約3年間の共同研究
掲載された共同研究論文のタイトルは「Promoting a New Wave: Deciphering the “Bonniers Japan” Mark and Unravelling the Promotion of Japanese Modern Design in 1960s America(新たな潮流を生み出す:〝Bonniers Japan〟の刻印から読み解く、1960年代アメリカにおける日本のモダンデザインの普及)」です。掲載誌である「The Journal of Modern Craft」は、クラフトをデザインや建築、民芸などと関わる文化的・社会的な実践として捉える2008年創刊の国際学術誌です。


研究は投稿から査読、修正を経て掲載決定まで約3年を要しました。「Art Across Cultures」を専門とするキムリー准教授が文献調査や枠組み構築を担い、陶芸を専門とする松葉講師が技術面の検討や工場などへの聞き取り調査を担当しました。断片的な一次資料をつなぎ合わせ、互いの専門性を補い合うことで研究が進められました。
現代の地域文化とデザインへの展開

キムリー准教授と松葉講師の研究は、2022年に関西外大の「国際文化研究所(IRI)共同研究プロジェクト」に「讃岐民具連の活動によって制作された陶磁器のマーケティングについて」のテーマで採択されたものです。2023年2月の「第9回IRI言語・文化研究フォーラム」でも調査結果が発表されました。
キムリー准教授は、海外市場を意識した輸出政策が出発点となった今回の知見を踏まえ、現代の訪日外国人を対象とする視点を取り入れながら、地域の文化や歴史を伝える現代の地域文化とデザインのあり方を探求していきたいとしています。
関西外国語大学の概要とお問い合わせ先
- 公式サイト: https://www.kansaigaidai.ac.jp
- 所在地: 大阪府枚方市
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- 論文要旨URL: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17496772.2025.2675091

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本記事は関西外国語大学の発表をもとに作成されています。
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