ジェームズダイソンアワード2026年度国際最優秀賞の2作品が決定
ジェームズ ダイソン財団は、国際学生デザイン・エンジニアリングアワードであるJames Dyson Award(ジェームズ ダイソン アワード、以下JDA)の2026年度国際最優秀賞2作品を発表しました。選出されたのは、建物の損傷を検知するセンサー「Sentinel」と、視線追跡で脳振盪をスクリーニングするヘッドセット「Rumble Rims」の2つの発明です。受賞者にはそれぞれ賞金30,000ポンド(約630万円*¹)が贈られます。

サステナビリティ部門の国際最優秀賞には、フィリピンのデ・ラ・サール大学卒業生で構造エンジニアのAldrei Ong氏が開発した「Sentinel」が選ばれました。
世界では毎年マグニチュード5以上の地震が約1,700回発生しており*²、1970年から2023年にかけての地震などの地球物理学的災害による経済損失は推計1兆5,900億米ドルにのぼります*³。地震後の建物の安全性判断は目視点検や専門的な検査に頼ることが多く、時間とコストがかかる点が課題となっていました。
Sentinelは、建設時に鉄筋を所定の位置に保持するために使われるコンクリート製部材「スペーサーブロック」に、建物内部のひび割れや損傷を検知する機能を持たせた低コストのセンサーです。ブロック内に電気を通す導電性材料を含んだ自己検知型コンクリートを用いており、損傷が生じた際の電気抵抗の変化を測定します。各ブロックは埋め込まれた電極により小型の電子モジュールに接続され、大きな変化が検知されるとデータが無線でオンラインダッシュボードに送信されます。



1個あたりの推定製造コストは約0.15米ドルで、既存の構造部材を活用するため建設時にそのまま組み込むことが可能です。現在はフィリピンの建物で実環境モニタリングが行われており、今後は専用プリント基板への置き換えや既存建物向けモデルの開発が計画されています。
メディカル部門の国際最優秀賞には、アメリカのハーバード大学のCleo Pontone氏、Radhika Saran氏、Sophia DeVito氏が開発した「Rumble Rims」が選ばれました。
スポーツにおける脳振盪は症状が現れるまでに最大72時間かかることもあり*⁴、競技現場での客観的なスクリーニング技術は高価なものが多いため普及が進んでいませんでした。
Rumble Rimsは、赤外線カメラと45度のダイクロイックミラーを用いた低コストの視線追跡ヘッドセットです。2~3分のテストで選手の眼球運動を測定し、モバイルディスプレイが測定結果をリアルタイムのガイダンスに変換します。診断ではなくスクリーニングを目的としたツールであり、競技現場での初期判断や、試合後の継続的なテストによる客観的な回復記録の作成を支援します。



今後はプロトタイプの改良や眼球運動テストの改良を進め、選手や医療アドバイザーらとともに検証を行い、長期的には学校やユーススポーツプログラムでの試験導入や医療機器としての検証を目指すとしています。
過去最多の応募と日本からの選出
2005年に始まったJDAは、これまでに世界中で400件以上の学生の発明を支援し、総額150万ポンド以上の賞金を授与してきました。2026年度は世界28の国と地域から過去最多となる2,294件の応募が寄せられました。
日本からは、法政大学卒業生4名が開発した「morito -火を使わないデジタル仏具-」が国際トップ20に選出されています。
ダイソン創業者のジェームズ ダイソンは、受賞作について、命と健康に関わる深刻な危険にシンプルなアイデアで挑み、人命を救う可能性を秘めていると評価しています。
組織概要
- ジェームズ ダイソン財団(James Dyson Foundation): 2002年に英国で設立。英国、米国、日本、シンガポール、フィリピン、マレーシアなどでデザイン、テクノロジー、エンジニアリング教育事業をサポートしている。ジェームズ ダイソンと財団は慈善目的で1億5,500万ポンドを超える寄付を実施。
- ジェームズ ダイソン アワード(James Dyson Award): ジェームズ ダイソン財団が運営する国際学生デザイン・エンジニアリングアワード。エンジニアが世界の課題を解決する力を持っていることを証明するために設立された。
*¹ 賞金参考金額:1ポンド=約212円 https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/ *² QuakeScout「Earthquake Statistics: How Many Earthquakes Happen Each Day & Year」 *³ 国連防災機関(UNDRR)「Global Assessment Report 2025」 *⁴ FIFA・世界保健機関(WHO)「Suspect and Protect」キャンペーン
本記事はジェームズ ダイソン財団の発表をもとに作成。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



