小豆島が妖怪とアートのまちに変貌、地元オリーブ企業が地域創生に取り組む理由

小豆島でオリーブ関連の事業を行う企業により、同地が妖怪・アートのまちとして生まれ変わりつつある。一見すると関連性が見えない取り組みだが、そこには島を盛り上げたいという熱い思いがあった。

過疎化の進む小豆島の商店街を復活させようと、アートを主軸とした観光事業に取り組む「小豆島・迷路のまちアートプロジェクトMeiPAM」が、令和6年度あしたのまち・くらしづくり活動賞で振興奨励賞を受賞した。全国から寄せられた197編の応募の中から選ばれた28編の一つだ。古民家を活用した妖怪美術館を中心とした地域事業創造の活動と成果が評価された。

令和6年度 あしたのまち・くらしづくり活動賞び表彰式(2024年11月2日、ホテルグランドヒル市ヶ谷)。(左から)花木啓佑氏(公益財団法人あしたの日本を創る会会長)、柳生忠勝氏(小豆島ヘルシーランド株式会社副社長)

呉服店の蔵から始まった再生

約700年前、海賊から街を守るために作られた細い路地が残る小豆島の「迷路のまち」。その古い街並みを舞台に、現代アートと妖怪文化が融合する独特の観光スポットが生まれている。そんなプロジェクトを運営するのは「小豆島ヘルシーランド」という、同地を拠点にオリーブ関連製品を扱う会社ということだから意外だ。

「最初のきっかけは、明治時代に建てられた三階建ての蔵でした」と、プロジェクト責任者であり、小豆島ヘルシーランドの地域事業創造部シニアマネージャーである佐藤秀司さんは振り返る。かつて呉服店として使われていたこの蔵が取り壊しの危機に瀕していた2011年、同社は建物を取得してアートスペースとして再生。これが「小豆島・迷路のまちアートプロジェクトMeiPAM」の始まりとなった。そして2018年には、妖怪文化がテーマに加わった。

現代の妖怪が集う美術館

点在する4つの古民家を改修した美術館には、900体を超える妖怪造形が展示されている。その多くが、2013年から続く「妖怪造形大賞」というコンテストに寄せられた作品だ。

「パソコンの妖怪、スマホの妖怪、SNSのいいねを集める妖怪、放射能を食べてくれる妖怪など、現代人の不安や悩みを反映した作品が集まってきます」と佐藤さん。日本の妖怪文化は決して過去のものではなく、現代にも息づいているという。

この特徴的なコンセプトは、特に欧米からの観光客の関心を集めている。「例えば、ハイヒールの妖怪『外反母趾』は、ジェンダー問題を表現した作品としてニューヨークタイムズで取り上げられました。その記事を見て、わざわざニューヨークから訪れた方もいらっしゃいます」

オリーブから始まる地域循環

では、なぜオリーブ関連事業を手掛ける企業が、このような文化事業に取り組むのか。その理由は、企業理念に込められている。

「心と体と絆の健康を追求し、瀬戸内・小豆島の発展に寄与する」。この社是のもと、同社は島外からの収益を島内で循環させる仕組みづくりを目指してきた。

「オリーブ事業で得た収益を地域に還元し、その還元が地域の発展を生み、さらにそれが私たちの事業にも返ってくる。その循環を作ることが、私たちの目指す地域創生です」と佐藤さん。「1000年続くオリーブの森」を作りたいという同社の長期的な目標のためにも、地域全体の活性化が不可欠だという。

深い体験を提供する観光地へ

取り組みの成果は、観光客数に表れている。コロナ前には年間10万人まで増加し、現在も同水準まで回復。平日は外国人観光客が中心で、全体の2〜3割を占めるという。

「妖怪美術館を目的に来られた方に、迷路のような路地を散策しながら、地元の老舗和菓子店や食堂も楽しんでいただく。より深い体験を提供できればと思います」と佐藤さん。

また日本人にとって、妖怪文化は意外な発見をもたらすという。「例えば物に名前をつけたり、『この子』と呼んだりする習慣。それは八百万(やおよろず)の精神、つまり日本特有のアニミズム的な考え方の表れです。妖怪を通じて、そんな日本文化の特徴も感じていただければ」

来年は瀬戸内国際芸術祭や大阪万博の開催で、さらなる観光客増加も期待される。オリーブの島として知られる小豆島に、妖怪という新しい魅力が加わっている。

MeiPAM
https://meipam.net

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