Dellows News

Caltechの下條信輔教授が岡山大学で講演、ヒト磁気感覚やAIへの課題を語る

国立大学法人岡山大学の研究・イノベーション共創機構は、津島キャンパスの創立五十周年記念館において、カリフォルニア工科大学(Caltech)の下條信輔教授を講師に招いたJ-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)特別講演会「ヒト磁気感覚は本当か?~心理学史上のスキャンダル、その科学的解決と、AIへの問題提起~」を開催しました。

本講演会は、おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)との共催により実施され、企業関係者や学生など72人が参加しました。岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の明石卓也教授と下條教授が、ニューロサイエンスとAIに関する融合研究において10年以上にわたり共同研究を続けてきたことを契機に実現したものです。

下條教授は、実験心理学・認知神経科学を専門とし、視覚、錯覚、注意、無意識、意思決定など人間の知覚と意識に関する研究を手がけています。講演では、再現性をめぐって議論されてきたヒト磁気感覚研究を題材に、脳波測定や行動実験、多感覚統合の観点から得られた知見が紹介されました。

1980年代に人間にも磁気コンパスがあるとする実験結果が報告されたものの、その後の追試では再現が困難であった経緯が説明されました。その上で、本人に磁場変化の自覚がない場合でも特定の磁場変化に対して脳活動が変化する可能性が示され、脳が磁場に反応していることとその情報を方位判断や行動に利用できることは区別して捉える必要があると述べられました。

潜在学習と人間の「来歴」から考えるAIへの示唆

講演ではさらに、磁気感覚と視覚など他の感覚との統合や、刺激の存在や規則性に気づかないまま学習が進む潜在学習、そしてAIへの問題提起へと議論が展開しました。

下條教授は、人間の認知はその場で与えられた入力情報だけで決まるのではなく、遺伝、身体的経験、他者との関係、社会や文化、生活の履歴といった個人の来歴によって形成されると指摘しました。これらを踏まえ、現在のAIを考察する上でも潜在知覚、潜在学習、確信度(=自己のメタ認知)、身体性、社会性、歴史性をどのように捉えるかが重要であると提起しました。

学長表敬訪問と今後の研究交流の継続

講演会終了後、下條教授は岡山大学の那須保友学長を表敬訪問し、知覚・意識、潜在学習、AIに関する研究について意見交換を行いました。

面談では、今回の特別講演会を機に関連分野の講演をシリーズ化し、年1回程度の開催を継続していくことについて意見が交わされました。今後も下條教授が継続的に同大学を訪問し、講演や研究交流を進めていく予定です。

本記事は国立大学法人岡山大学の発表をもとに作成。

アクセスランキング

今日

1週間