花王、細菌由来リゾチームを高効率に生産する二段階発酵技術を確立
花王のケミカル事業部門は、細菌由来のリゾチームを高効率に生産する独自の発酵生産技術を確立しました。リゾチームを一時的に働きが抑えられた状態で生産し、培養後に働きを持つ状態へと変換する二段階の生産技術を開発したものです。動物由来原料に依存することなく、さまざまな特長をもつリゾチームの安定生産につながると考えられています。
開発の背景と技術課題
リゾチームは、多くの生物が細菌から身を守るために持っている天然の抗菌酵素です。外部から侵入する細菌の細胞壁を分解して増殖を抑える働きがあり、食品の品質保持や保存性の向上、飼料分野における家畜の腸内環境の改善、バイオ分野での有用物質の抽出や精製など、幅広い産業で活用されています。
現在流通しているリゾチームの多くはニワトリの卵白由来のものが利用されていますが、動物由来原料への依存に加え、適用できるpHなどの条件が限られることや用途に合わせた改良の難しさが課題となっていました。代替として細菌による発酵生産が期待されているものの、リゾチームが生産菌自身の細胞壁を分解して生育を妨げるため、十分な生産量を確保することが技術的な課題となっていました。
二段階生産法による生産の成功
花王は、一部の細菌由来リゾチームが持つプロペプチドと呼ばれるタンパク質の一部分に着目しました。タンパク質の構造予測手法を用いて、プロペプチドが細胞壁を分解する働きを抑え、取り除かれると活性化するという仮説を立てました。
この仮説をもとに、プロペプチドを持った状態(リゾチーム前駆体)として活性を一時的に抑えて生産し、培養後にプロペプチドを取り除いて活性型へ変換する二段階生産法を考案しました。同社が保有する枯草菌(Bacillus subtilis)を用いて検証したところ、枯草菌への影響を低減し、従来方法よりも高い生産性を示すとともに、培養後の処理により活性型へ変換できることを確認しました。
多様なリゾチームへの応用と高機能酵素の開発
広範なアミノ酸配列情報とタンパク質の予測構造を解析した結果、プロペプチドを持ち二段階生産法を適用できる可能性があるリゾチームの候補を多数見いだし、系統や配列の異なる複数の候補でも適用できることを確認しました。
本技術を活用して開発中のリゾチームは、評価した範囲において、卵白由来リゾチームでは分解しにくい細菌に対しても作用し、より幅広い細菌種の細胞壁に対して効果を示すことが確認されています。また、弱アルカリ性を含む幅広いpH条件で活性を示し、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が存在する条件でも高い安定性を維持することが確認されています。
今後の展開と学会発表
花王のケミカル事業部門は、確立した生産技術を活用し、細菌由来の高機能リゾチームの量産化に向けて製造条件の最適化や用途に適したリゾチームの選定・性能評価を進め、事業化をめざします。

なお、本技術に関する研究成果は、2026年9月15~17日に開催された「第78回日本生物工学会大会」で発表されました。
関連情報:花王リゾチームサイト URL:https://chemical.kao.com/jp/bio/Product/lysozymes/
本記事は花王の発表をもとに作成されています。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



