広島大とウエルテック、歯磨き粉の研磨剤がフッ化物の残留量に影響と発表
広島大学大学院医系科学研究科(小児歯科学分野)とウエルテック株式会社の共同研究グループは、歯磨き粉に含まれる研磨剤の有無が、歯磨き後に口の中に残るフッ化物の量に影響を与える可能性があることを明らかにした。健康な成人を対象とした測定や人工の歯を用いた実験により、研磨剤を含まない歯磨き粉の方が口腔内のフッ化物濃度を高く維持する傾向が確認された。本研究成果は学術誌「Dentistry Journal」に掲載されている。

研磨剤とフッ化物の関係に着目した研究背景
フッ化物には歯質強化作用があり、むし歯予防効果が広く知られていることから多くの歯磨き粉に配合されている。フッ化物の効果を十分に発揮させるためには、歯磨き後も口の中にある程度の濃度で残り続けることが重要とされる。
一方で、歯磨き粉には着色汚れ(ステイン)の除去などを目的に研磨剤が配合されている製品も多い。しかし、研磨剤とフッ化物がどのように影響し合うかについては、これまで十分に検討されていなかった。
実験で確認されたフッ化物濃度の違い
研究グループは、健康な成人7名を対象に、研磨剤を含む歯磨き粉と含まない歯磨き粉の市販品計5種類を使用してもらい、歯磨き後の口腔内フッ化物濃度を経時的に測定した。あわせて、同一の歯磨き粉で研磨剤の配合量のみを変えたサンプル(0%・10%・20%・30%)の比較や、歯の主成分に近いアパタイト(人工の歯の材料)を用いた実験も実施した。
実験の結果、以下の点が明らかになった。
- 研磨剤を含まない歯磨き粉は、ブラッシング後5分以降のすべての測定時点で口腔内のフッ化物濃度が最も高い傾向を示した
- 研磨剤の配合量を変えた比較では、研磨剤を含まない歯磨き粉(0%)がブラッシング10分後以降、他の濃度(10%・20%・30%)よりも高いフッ化物濃度を維持した
- 人工の歯(アパタイトペレット)を用いた実験でも、研磨剤を含まない歯磨き粉で磨いた場合に複数回すすいだ後もフッ化物が多く残ることが確認された
これらの結果から、研磨剤には歯の表面に付着したフッ化物を取り除いてしまう働きがある可能性が考えられ、研磨剤の有無が口腔内でのフッ化物の残りやすさに影響することが示唆された。

目的に応じた使い分けと今後の検証
今回の研究成果について、研磨剤を含まない歯磨き粉が一律に優れていることを意味するものではないとしている。研磨剤にはステイン除去やプラークコントロールなどの役割があるため、目的に応じた使い分けが大切となる。また、今回は少人数を対象とした探索的な研究であり、実際のむし歯予防効果の差については今後さらなる大規模な検証が必要とされている。
ウエルテックは、広島大学大学院医系科学研究科小児歯科学(野村良太教授)と産学連携し、研磨剤無配合のジェルコートFを提供して研究を実施した。適切なタイミングや使い方を工夫することで、フッ化物の薬用効果をさらに引き出すことが可能であると考えられている。
論文情報
- タイトル: Effect of Silica-Based Abrasive Ingredients on Fluoride Concentration in Toothpaste: An In Vitro and In Vivo Study (シリカ系研磨剤成分が歯磨き剤中のフッ化物濃度に及ぼす影響:in vitroおよびin vivo研究)
- 著者: Shuma Hamaguchi, Tatsuya Akitomo, Masashi Ogawa, Satoru Kusaka, Ryota Nomura
- 掲載誌: Dentistry Journal(2026年)
本記事はウエルテック株式会社の発表をもとに作成。
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