Dellows News

辻雄貴空間研究所、華道家・辻雄貴の約10年間の活動をまとめたウェブアーカイヴを公開

株式会社辻雄貴空間研究所は、華道家である辻雄貴の約10年間にわたる活動をまとめた初のウェブアーカイヴを公開した。いけばなを起点に、花、茶、能、素材、空間、建築、土地へと活動を展開してきた歩みを紹介している。自然や人、素材、場所に宿る生命を見つめ、その可能性を呼び起こすという姿勢のもと、国内外で手がけてきた作品や空間表現、文化と社会への構想を伝える。

建築の研究といけばなの鍛錬から広がる空間表現

辻雄貴は大学・大学院で建築や空間、構造の研究を重ねる一方、20代からいけばなを学び始めた。植物の生命を見つめる鍛錬と建築の研究を重ねるなかで、人と自然、空間の関係を捉える独自のまなざしを育み、その実践は花器の中から舞台、庭、建築、山へと広がっていった。

対象の生命を新たにつくり出すのではなく、すでにあるものを見つめて呼び起こす実践を、辻は「Sculpting Life|生命を彫刻する」と呼んでいる。海外展開としては、ニューヨークのカーネギーホールで現地の山から切り出した植物とヘラジカの角を用いたパフォーマンスを実施したほか、オーストラリア・シドニーの日本文化をテーマとする複合施設「Prefecture 48」内のフュージョンダイニング「FIVE」に大型彫刻作品を制作した実績を持つ。なお、辻は2026年にForbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30 2026」に選出されている。

理念を示す「藝・耕・游・環」と「シャクジ能」の実践

辻の実践は作品制作にとどまらず、人々が出会い文化を育み、価値を自然や地域へつなぐ流れを重視している。この連なりは以下の4つの動きとして捉えられている。

  • 藝|EVOKE:素材や場所に宿る生命を見つめ、その可能性を呼び起こす。
  • 耕|CULTIVATE:生まれたものを、人や時間とともに育て、文化として根づかせる。
  • 游|EXPERIENCE:花、茶、能、食、空間などを通して、人が文化の中に身を置き、体験する。
  • 環|CIRCULATE:生まれた価値を自然や地域、次の担い手へとつなげていく。

土地の生命と文化を結ぶ取り組みとして、能楽師・大倉慶乃助と2013年に始めたプロジェクト「シャクジ能」がある。土地ごとに空間を設え、能楽と献花差立を通して場所に宿る自然や記憶と向き合ってきた。2026年1月には静岡・浮月楼で「浮月シャクジ能」を開催し、倒れた春楡を庭の橋へ再生するための寄付を募る現代の勧進能として、庭園、いけばな、茶懐石、能楽を一日で体験する場をつくった。

循環型アートへの取り組みと国際的な文化事業

活動の展開のひとつとして、素材を文化として生かしたあとも次の営みへとつなげる「循環型アート」に取り組んでいる。空間表現に用いた竹の一部をチップ化して山へ還すことや、倒木や使われなくなった素材に舞台や彫刻、庭の中で新たな役割を与える試みを行っている。素材の行き先だけでなく、自然、文化、人の仕事が続いていく関係の育成を目指す。

また、日本とオマーンの国交樹立50周年を記念する文化事業では、ロイヤル・オペラ・ハウス・マスカットを舞台とした能「石橋」の舞台芸術を担当した。日本と現地の植物を用いた生け花によって両国の自然と文化を舞台上で結ぶなど、土地ごとの違いに向き合いながら関係を生み出す実践を重ねている。

静岡の山での場づくりと文化を支える職能の循環

辻は現在、故郷である静岡にある約1,500坪の山を拠点とし、二十四節気の視点から植物を育てて花材として生かす場づくりを進めている。花、茶、能、ものづくり、教育などの営みを結び、人と自然が関わり続ける場所として育てることで、次の世代へ受け継いでいくことを目指している。

株式会社辻雄貴空間研究所は、花をいける人、植物を育てる人、場をつくる職人、文化を伝える人など多様な関わりが結びつく仕組みづくりを進める方針だ。芸術家、職人、研究者、企業、地域の人々との協働を通じて、作品や空間、体験を生み出しながら、文化を支える仕事や仕組みを育てていくとしている。

本記事は株式会社辻雄貴空間研究所の発表をもとに作成。

アクセスランキング

今日

1週間