人気絵本シリーズ「なんでやねん」がNetflixでアニメ化、新手法で絵本の魅力を最大限に

累計発行部数13万部、子どもたちに大人気の絵本「なんでやねん」シリーズのアニメが、12月1日よりNetflixで配信開始となる。同シリーズは、朝起きたら突然ちょんまげが生えていたり、パジャマを脱いだらふんどしになっていたりと、思わず「なんでやねん!」とツッコミを入れたくなる展開が笑える絵本だ。今回のアニメ化では、大日本印刷株式会社(DNP)が開発した新しいアニメーション制作手法「ライトアニメ」を採用。原作の世界観を損なうことなく、絵本ならではの魅力を活かしたアニメーションとして誕生する。

あそび歌から生まれた人気絵本シリーズ

「なんでやねん」シリーズの誕生は、あそび歌作家の鈴木翼さんが子どもたちを相手に行っていたあそび歌がきっかけだった。世界文化ワンダーグループが行っていた幼稚園の先生に向けたイベントで披露されたところ、「明日の保育に使える」などと先生たちから好評。「そんなに好評なら絵本にしてみてはどうだろう?」ということで、2013年に絵本化が実現した。以降、『なんでやねん』『おふろでなんでやねん』『ゆうえんちでなんでやねん』『まほうでなんでやねん』『うみでなんでやねん』と、全5作品を展開している。

シリーズの面白さについて、世界文化ワンダーグループの担当者は「かなりナンセンスな展開で、ありえないことが次々と起こっていく面白さがある。子どもたちがシンプルに面白いと思える要素が次々と出てくるのが特徴」と解説してくれた。

原作の世界観を守る新技術「ライトアニメ」

今回のアニメ化で採用された「ライトアニメ」は、DNPが2022年8月に開始した新しいアニメーション制作手法だ。従来のアニメーション制作では、原作の絵とは別にアニメ用の作画を行う必要があったが、「ライトアニメ」では原作の絵をそのまま活用。原稿からコマやパーツを切り出し、必要であればカラーリングを行った後にモーションを加えて動画化する。

この手法により、制作期間は従来の6分の1、コストは3分の1から5分の1程度に抑えることが可能に。DNPの担当者は「普通のアニメは作画工程で何万枚も絵を描く必要がありますが、それがないことと、絵本で描かれている絵自体を動かすことができる点が特徴です」と説明する。絵本作品の魅力は「絵」が多くを担っているため、それを利用することができるのは大きなメリットと言える。

三者三様のメリット

「ライトアニメ」の特徴は、単にコストと時間の削減だけではない。世界文化ワンダーグループの担当者は「通常のアニメ制作では出版社側が意見を出しにくい領域でも、今回は意見を汲んで作っていただけた」と評価する。

たとえば声優の選定では、5パターンほどの候補を用意し、原作者の鈴木翼さん(シリーズ1作目で原案、以降で文を担当)と絵本の作画を手がけたあおきひろえさんにもチェックを依頼。多くの関係者の意見を取り入れながら制作が進めたられたという。これは「ライトアニメ」の特徴である低コスト・短期間での制作が可能にした丁寧な制作プロセスと言える。加えて、通常のアニメは製作委員会制をとることが多いが、「えほんライトアニメ」はDNPが一社でプロジェクトマネージャーを務めるため、通常の出版印刷でのプロセスに近しい進め方ができるのもその要因だ。

原作の絵を活かすという手法は以前から存在したものの、「ライトアニメ」をはじめ近年の技術向上により、より自然な動きやカメラワークが実現可能になってきているという。クオリティの高まりから、アニメとライトアニメの境目がなくなってきており、そうした状況の中、「ライトアニメの手法なら」と、アニメ化をOKする絵本作家さんもいるとのことだ。

「絵本」×「ライトアニメ」が広げる新たな可能性

従来、アニメ化が難しかった絵本というジャンルに新たな可能性を開く「ライトアニメ」。原作の世界観を守りながら、制作側と版元、そして作家の意向をうまく調和させられる手法として、今後さらなる展開が期待される。

『なんでやねん』商品情報(世界文化社グループ 公式サイト)
https://books.sekaibunka.com/book/b10103597.html

※ライトアニメは、DNP大日本印刷の登録商標です。

valvix

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