淡明細胞型腎細胞がんで酵素CTDNEP1高発現が予後不良と関連 東京理科大など
東京理科大学薬学部の早田 匡芳教授らの研究グループは、腎細胞がんの約8割を占める淡明細胞型腎細胞がんにおいて、脱リン酸化酵素CTDNEP1の高発現が患者の予後不良と関連していることを明らかにした。一方、乳頭状腎細胞がんでは予後との関連が限定的であり、CTDNEP1の臨床的な意味が組織型によって異なる可能性が示された。本研究成果は、2026年10月1日に国際学術誌「Anticancer Research」にオンライン掲載された。
組織型に応じた予後評価が求められる腎細胞がん
腎細胞がんは、腎臓の尿細管上皮細胞などから発生する悪性腫瘍で、腎臓に発生するがんの中で最も多くを占める。早期の予後は比較的良好なものの、進行・転移すると予後が悪化し、米国のがん統計では遠隔転移例の5年生存率は約18%と報告されている。2022年には世界で約43万4千人が新たに腎細胞がんと診断され、約15万6千人が死亡したと推定されている。
腎細胞がんには複数の組織型が存在し、全体の約80%を占める淡明細胞型腎細胞がんと、約10〜15%を占める乳頭状腎細胞がんが代表的である。組織型によって遺伝的背景や治療への反応が異なるため、それぞれに応じた予後評価法や治療戦略が求められていた。
淡明細胞型ではCTDNEP1高発現が生存期間の短縮と関連
本研究は、東京理科大学の早田 匡芳教授、同大学大学院薬学研究科の新居 真由香氏(博士後期課程3年)、日本医科大学医学部の太田 一隆氏(研究実施時、医学部3年生)らのグループにより実施された。米国の大規模がんゲノム研究プロジェクトThe Cancer Genome Atlas(TCGA)のデータを用い、淡明細胞型腎細胞がん512例と乳頭状腎細胞がん283例の遺伝子発現データおよび臨床情報を解析した。
解析の結果、淡明細胞型と乳頭状の双方で、がん組織のCTDNEP1発現量は正常組織と比べて有意に高く、ステージIの早期段階から進行期まで高い発現レベルが維持されていた。
さらに淡明細胞型腎細胞がんでは、CTDNEP1高発現群は低発現群と比べて全生存期間、疾患特異的生存期間、無増悪期間が有意に短かった。低発現群に対するハザード比は、全生存期間で2.16、疾患特異的生存期間で2.75、無増悪期間で2.15となり、年齢や性別、病期を考慮した統計解析でも関連が維持された。病期別の解析ではステージIIIで特に明確な差が認められた。なお、無病期間については解析対象となる患者数が限られており、有意な差は認められなかった。
乳頭状での限定的な関連と組織型による分子背景の違い
乳頭状腎細胞がんにおいては、全生存期間、疾患特異的生存期間および無増悪期間について、CTDNEP1高発現群と低発現群の間に一貫した差は認められなかった。無病期間は一部の解析でCTDNEP1低発現との関連が認められたものの、解析方法によって結果が異なり、予後との関連は限定的かつ一貫していないと判断された。
また、遺伝子機能の解析では、CTDNEP1高発現群で多く認められる経路が組織型によって異なることが判明した。淡明細胞型では炎症・免疫関連経路が多く認められた一方、乳頭状では免疫応答に加え、酸化的リン酸化やミトコンドリアによるエネルギー産生に関連する経路が特徴的であった。なお、CTDNEP1発現と免疫細胞の推定浸潤量との相関は両組織型ともに弱かった。
研究グループは以前、すい臓がんにおいてCTDNEP1の低発現が予後不良と関連することを報告していたが、今回の結果から、同じ遺伝子であってもがん種や組織型によって予後との関連方向が異なることが示された。早田教授は、同じ分子であってもがん種や組織型によって臨床的な意味が異なる可能性を示す興味深い結果であるとし、今後は細胞や動物モデルを用いて進展との関連を検証していきたいとしている。
今後は患者組織や培養細胞、動物モデルを用いて検証を進め、将来的にはCTDNEP1を組織型や病期に応じた予後評価へ活用することや、治療標的となり得るかどうかの機能的検証を進める予定である。
本記事は東京理科大学の発表をもとに作成。
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