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三菱総合研究所、ヒューマン・デジタルツインの社会実装に向け3つの方策を提言

株式会社三菱総合研究所は、人の感情や価値観、判断傾向などの心的状態や特性を用途に必要な範囲でモデル化する「ヒューマン・デジタルツイン(HDT)」の可能性と課題を整理した。同社は、現実社会で実施する前に仮想空間で人の反応を探索する技術としてHDTを位置づけ、信頼性のあるかたちで社会実装するための3つの方策を提言している。

HDTは、人の心そのものをコピーするのではなく、会話や行動、生体情報などをもとに、感情、価値観、嗜好(しこう)、判断傾向などを特定の目的に必要な範囲でモデル化する概念である。テキストや画像、音声など異なる形式の情報を統合的に処理できるマルチモーダルAIや、心理・行動データ解析、生体センシング、社会シミュレーションなどの技術融合によって実現が進められている。

政策やサービスの設計において、アンケートでは率直な回答が得にくい場合や、長期・極端・心理的に高負荷な条件を実社会で試しにくいといった制約が存在する。HDTは、現実には調査や測定が難しい反応を仮想空間で探索し、実際の調査や専門家の判断、当事者参加を補完する意思決定支援手段として期待されている。

予測精度の課題と「心理情報」に対する懸念

HDTには調査や実験の補完、実社会では試しにくい条件の試行などの活用が期待される一方、現在の技術は人の反応を精密に予測できる水準には達していない。同社の技術検証では、実際の人のデータに近い値や傾向を再現できたものの、従来の手法と比較して十分な予測精度は確認されなかったとしている。

また、人の内面を扱うことに対するリスク対応も課題となっている。同社が20~60代の男女4,000人を対象に実施した調査では、本人が直接提供していない健康状態、性格、信条などまでをAIに推定されることについて、64.5%が懸念を示した。このため、氏名や住所などの個人特定データに加え、データから推定された心理情報も管理対象に含める必要があるとしている。

社会実装に向けた3つの方策

同社は、HDTの社会実装に向けて以下の3つの方策を提言している。

  • HDTの「信頼限界」を用途ごとに定める:産業界が利用場面に応じた性能・評価指標を設定し、科学的検証を重ねながら、それぞれの用途で信頼して使える範囲を明確にする。
  • 「実社会では試せない」用途から実証する:防災、医療・福祉、教育、地域の合意形成など、現実での試行が難しい用途から実証を進め、段階的に活用範囲を広げる。
  • 「心理情報」を守りながら産業を育てる仕組みをつくる:行政が共通の最低要件を示し、官民で用途別のルールを整備・更新することで、利用者の信頼と産業の成長を両立する市場基盤を構築する。

今後の取り組み

HDTは人を代替するものではなく、類型化された集団を対象とした課題探索や説明方法の改善などから段階的な社会実装が進められる見通しである。株式会社三菱総合研究所は今後も企業、行政、大学・研究機関、ユーザー・当事者と連携し、実証実験などを通じてHDTを意思決定に活用できる範囲や条件の明確化を図る予定としている。

なお、本研究成果の一部は、日本電気株式会社(当時NECソリューションイノベータ株式会社)とエム・アール・アイ リサーチアソシエイツ株式会社との共同研究によって得られたものである。

本記事は株式会社三菱総合研究所の発表をもとに作成。

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