薬剤耐性真菌カンジダ・アウリス診療の手引き改訂 適切な感染対策を解説
AMR臨床リファレンスセンターは、世界的に警戒されている真菌カンジダ・アウリスに関する診療の手引きを改訂し、医療従事者に向けた対策や知見を共有した。手引きは2026年3月に第2.0版が公開され、同年7月に第2.1版へと更新されている。制作に携わった国立健康危機管理研究機構の石金正裕医師が、カンジダ・アウリスの特徴や診断・治療、院内感染対策の要点を解説している。

WHOが最優先群に指定するカンジダ・アウリスの特徴
カンジダ・アウリス(Candida auris/Candidozyma auris)は、一般的な常在菌としてのカンジダとは異なり、多剤耐性や高い環境適応力を持つ真菌である。2009年に日本で慢性中耳炎患者の耳漏から初めて分離・報告され、その後世界各地で感染例が確認されている。
複数国で分離された株の調査では、93%がアゾール系のフルコナゾール耐性、35%がポリエン系のアムホテリシンB耐性を示し、41%が2種類以上の抗真菌薬に耐性を持っていた。主要3系統すべての抗真菌薬に耐性を示す株も確認されており、世界保健機関(WHO)の真菌優先順位リストでは最も警戒度の高い最優先群に分類されている。
環境表面では3週間以上、一部のプラスチック器具では4週間にわたり生存するとされる。ヒトへの保菌期間も3カ月以上に及ぶ報告がある。保菌者が発症する割合は海外報告で1割程度とされるものの、血流感染などの侵襲性感染症を起こした場合の致死率は30〜60%と報告されている。
海外株の持ち込みと国内拡大への警戒
カンジダ・アウリスは遺伝子型によって複数の系統(clade)に分かれる。2025年1月までに報告された日本国内発生例8例は主にclade IIで、局所にとどまる非侵襲性感染であり、薬剤感受性も比較的良好とされている。
一方、海外で多く分離されるclade I、III、IVは、全身に広がる侵襲性感染を引き起こしやすく、薬剤耐性頻度が高い特徴を持つ。韓国では2011年に侵襲性感染症の報告があり、日本でも2023年に海外渡航歴のある患者からclade Iによる死亡例が報告された。石金医師は、海外由来の株が国内に持ち込まれ拡大する可能性について注意を促している。

診断方法と抗真菌薬による治療方針
診断において、選択培地でのコロニー判定だけでは確定診断に至らないため、診療の手引き第2.1版では選択培地をスクリーニング用とし、確定診断には質量分析法または遺伝子検査法を用いることとしている。
保菌自体は治療対象とならないが、侵襲性感染症を発症した場合は抗真菌薬による治療が行われる。第一選択薬はエキノキャンディン系、第二選択薬はリポソーマル・アムホテリシンBとされる。カンジダ・アウリスは短期間で薬剤耐性を獲得することがあるため、治療効果を判定する血液培養とともに感受性検査を繰り返し行う必要がある。重症例ではミカファンギンとリポソーマル・アムホテリシンBの2剤併用が推奨されている。
感染予防策と医療機関における対応
予防策としては標準予防策に加え、個室隔離を原則とする接触予防策の徹底が求められる。環境表面に長期間生存することから、ベッド柵やドアノブなど高頻度接触部位の清掃・消毒、医療機器の専有化、退院後の病室消毒が推奨されている。接触者へのスクリーニング検査では、検出頻度が高い腋窩や鼠径部の確認が重要とされる。
感染や保菌を疑う要因として、過去1年以内の海外医療機関への入院歴が挙げられる。感染疑い例や診断例が発生した場合は、接触予防策を実施した上で最寄りの保健所へ連絡し、行政機関と連携して対応を進める流れとなっている。2026年6月時点で国内の院内アウトブレイク報告はないが、持ち込みを防ぐための適切な対策が求められている。

本記事はAMR臨床リファレンスセンターの発表をもとに作成。


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