千葉大や阪大、QSTが液体ヘリウムの機関間循環利用を本格開始へ
千葉大学理学部極低温室、大阪大学大学院理学研究科物理学専攻原子核実験グループ、量子科学技術研究開発機構(QST)は、液体ヘリウムの機関間での循環利用を2026年夏から本格的に開始したとしています。共同利用実験装置での実験後に生じたヘリウムガスを回収して千葉大学へ運搬し、再液化して再び実験に利用する仕組みを構築しました。貴重な資源を機関の枠を越えて循環利用することで、持続可能な研究環境を支えるモデルとして全国へ広がることを目指しています。
価格高騰と全量輸入に直面するヘリウムの課題
ヘリウムは日本において全量輸入に依存しているため、世界情勢の影響を受けやすく購入価格の上昇が続いており、この20年で約7倍にまで高騰しています。極低温環境が必要な研究開発分野では不可欠の寒剤として用いられますが、利用後は蒸発してヘリウムガスとなります。
ヘリウム液化装置を保有する千葉大学では、実験装置から液化設備まで回収配管が敷設されており、蒸発ガスを回収・再液化して学内でリサイクル利用を行ってきました。一方で液化設備や回収配管を利用できない場合は野外へ排気放出するしかなく、精製して利用できる状態にするまでの労力とコストが大きいことから、蒸発ガスの回収・リサイクル利用が求められていました。
近隣のQSTではMRIなどの定常的な設備に独自の再液化設備を備えているものの、不定期な実験用ヘリウムの気化に対応する必要がありました。そこでQSTの共同利用研究設備を利用する大阪大学のグループの呼びかけをきっかけに、学外におけるヘリウムのリサイクル利用の取り組みが始まりました。
液体ヘリウムが蒸発してヘリウムガスになると体積はおよそ700倍になります。一般的には高圧ガスボンベに圧縮充填して体積を減らして運搬しますが、安全性の確保や法的規制によって多大なコストがかかります。そのため、本取り組みではガスバッグ(風船)に1気圧の気体として貯めて運搬する方法を採用しました。
循環の具体的なプロセスは以下の通りです。


- 液体ヘリウムの供給(タンクの運搬は業者に委託)
- 実験で液体ヘリウムを使用し、気化したガスをガスバッグへ貯蔵(QST)
- ガスバッグの回収運搬、再液化(千葉大)
- 再び液体ヘリウムとして供給
機関横断連携の意義と今後の展望
先端研究を支えるインフラ設備であるヘリウム液化装置を機関の枠を超えて有効活用し、ヘリウムをリサイクル利用することは、省エネルギーや省資源、資源の循環利用の促進につながります。
なお、7月に千葉大学が採択された文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」においても本取り組みは支援されており、今後一層加速していく予定です。
研究関係者は、大阪大学の稲角直也氏や千葉大学の吉本佐紀氏、QSTの技術職員らの尽力によりリサイクル利用と費用低減が実現したことに触れ、技術職員の専門性とネットワークを生かした機関横断型の資源循環が全国へ広がることに期待を寄せています。
本記事は千葉大学理学部極低温室、大阪大学大学院理学研究科物理学専攻原子核実験グループ、量子科学技術研究開発機構の発表をもとに作成しました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



