近赤外光で蛍光する尿道カテーテルが医療機器として承認
国立がん研究センター東病院とカーディナルヘルス株式会社は、近赤外光照射下で蛍光反応を示すNIRC™蛍光尿道カテーテルを共同開発し、2024年3月に医療機器として承認された。カーディナルヘルス株式会社は2024年12月に全国の医療機関への発売開始を予定している。
NIRC™蛍光尿道カテーテルを患者の尿道に挿入後、近赤外光カメラで近赤外光を照射すると、体内のカテーテル挿入部位が蛍光反応とともにモニタ上に描出される。これにより、術者はモニタ越しに正確な尿道の位置を確認しながら手術を行うことが可能だ。
直腸がんの手術では、再発を防ぐためにがんから十分な切除範囲を確保する必要がある一方で、直腸に近接する尿道損傷による合併症を避けるため、術者は尿道の位置を正確に認識することが重要とされている。
NIRC™蛍光尿道カテーテルには、インドシアニングリーン(ICG)に類似した励起波長及び蛍光波長を有する蛍光樹脂が採用されている。近赤外光カメラでカテーテルに近赤外光を照射すると、カテーテルに含まれる蛍光樹脂による発光反応がモニタに描出される仕組みだ。
カーディナルヘルス株式会社は2019年に同じ蛍光樹脂を使用したNIRC™蛍光尿管カテーテルを開発しており、NIRC™蛍光尿道カテーテルは2作目となる蛍光カテーテルとなる。NIRC™蛍光尿管カテーテルは主に大腸や婦人科の手術の際に用いられるのに対し、NIRC™蛍光尿道カテーテルは直腸の手術に用いられる。
高齢化と食生活の欧米化から直腸がんの患者は増加傾向にあり、特に日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われている。今回の共同開発は、NEXT医療機器開発センターの支援のもと行われ、カーディナルヘルス株式会社が試作品を制作し、国立がん研究センター東病院が製品コンセプトや製品設計へのアドバイスを行った。
国立がん研究センター東病院の伊藤雅昭大腸外科長は「外科医の発想が出発点となり、この蛍光尿道カテーテルが生まれました。この製品が、多くの患者さんを治すことに役立つことを期待します」とコメントしている。