SNSで話題、1700ページの本格スパイスレシピ本が「無料」のワケ

1,700ページを超える本格的なスパイスレシピ本が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる。416種類ものレシピを収録しながら”無料”で提供されているこの本は、11月15日時点でKindleストアの「無料TOP100」で1位を記録。SNSでは「無料で手に入れられるレベルじゃない」「無料でいいのか戸惑う」などの声が寄せられている。なぜ無料なのか。著者であるメタ・バラッツさんに話を聞いた。

8年分のレシピを1冊に凝縮

「日本生まれのインド人、メタ・バラッツのスパイスカレーユニバース」。このタイトルの電子書籍が、Amazon KindleストアとKoboで無料公開されている。紹介されているレシピ内容は、伝統的なインドカレーから、ビリヤニ、アチャール、サブジ、チャイまで多岐にわたる。

バラッツさんは、鎌倉で創業70年のスパイス商「アナン株式会社」の三代目。今回の本は、アナン株式会社の公式オンラインショップ「インターネットオブスパイス」で8年間にわたって公開してきたレシピをまとめたものだ。

「日本生まれのインド人、メタ・バラッツのスパイスカレーユニバース」表紙

日本の四季と出会うスパイス料理

バラッツさんのレシピには、特徴的な背景がある。インド人の父と日本人の母のもと、日本で生まれ育ったという経験だ。

著者であるメタ・バラッツさん

「家庭では醤油とスパイスを合わせた料理や、肉じゃがと一緒にインド料理が出てくるような環境でした」とバラッツさん。その経験が、独自のレシピ開発につながっている。

「インドは雨季と乾季があって、食材の変化は日本ほど激しくないんです。一方、日本は四季があり、春に食べているものを冬には食べないなど、季節によって食材が大きく変わる。そういった日本の特徴に合わせたスパイスの使い方を考えています」

なぜ無料なのか

「スパイスを身近に感じていただきたい」。バラッツさんはそう話す。

実は日本の多くの人が「スパイスを使い切れない」という課題を抱えているという。「例えば、何かのきっかけでクミンは買ってみたけど、使い切れない。そういった方に、様々な使い方を知っていただきたい」

チキンときのこのビリヤニ

このような思いから、レシピは当初からウェブサイトで無料公開してきた。今回の電子書籍化でも、その方針は変わっていない。

スパイスを売ることよりも、まずスパイスを使う文化を根付かせたいというのが、バラッツさんたちの考えだ。

そんな本書には、マニアックな本格インド料理から、家庭で気軽に作れるレシピまでが収録されている。これは、バラッツさんが15年ほど前からインド各地を回り、地域ごとの料理を研究してきた成果だ。そんな大ボリュームのレシピ本が無料で手に入るのだから、SNSがざわつくのも頷ける。

ホタルイカのレッドアチャール

広がるスパイスの輪

「インターネットオブスパイス」は、スパイス料理のレシピサイトとしては日本最大規模。プロの料理人から家庭の料理愛好家まで、幅広い層に支持されている。

実は、このサイトには鎌倉発のユニークなストーリーがある。もともとレストランやデパートにスパイスを卸すことがメインだったバラッツさん。ある時、鎌倉の飲み屋での出会いをきっかけに知り合った仲間たちと「スパイスをもっと一般の人に届けたい」という思いを共有し、サイトの立ち上げを決意したのだ。現在では、そのメンバー全員が鎌倉に住み、サイトの運営やレシピの撮影を共に行っている。

今回の電子書籍は、そんな仲間たちと作り上げてきた8年分の蓄積を一冊にまとめた集大成。「スパイス料理は難しい」というイメージを払拭し、より多くの人にスパイスの魅力を伝えたい。無料公開という決断の背景には、そんな思いが込められている。

書籍URL:
Kindleストア:https://www.amazon.co.jp/dp/B0DJX32B2G/
楽天Kobo  :https://books.rakuten.co.jp/rk/86df3fd2b1f034d9b495115adb10aef2/

インターネットオブスパイス
https://internetofspice.com/

valvix

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