中京大学、運動単位リモデリングの程度が大きい高齢者ほど筋力が低いと発表
中京大学スポーツ科学部の渡邊航平教授の研究グループは、高齢者を対象に運動単位リモデリングの指標と筋力との関連性を調査し、運動単位リモデリングの程度が大きい高齢者ほど筋力が低いことを明らかにしました。本成果は、同研究室所属の日本学術振興会特別研究員PDの國木壮大氏を筆頭著者とした論文として発表されました。脱神経した筋線維を救済する生理学的適応とされてきた運動単位リモデリングが、加齢に伴う筋力低下を十分に防ぐことはできない可能性を示しています。

高齢者の筋力差と運動単位リモデリングの背景
加齢に伴って筋力は低下しますが、その度合いには個人差があります。筋力発揮には運動神経とそれが支配する複数の筋線維からなる運動単位が不可欠ですが、加齢により運動単位は減少します。この過程では運動神経の死滅によって筋線維から神経支配が外れる脱神経が起こります。
脱神経した筋線維は近隣の運動神経から枝が伸びて再神経支配を受けることで消失を免れ、この一連の過程は運動単位リモデリングと呼ばれています。従来は高齢者の運動機能を維持するための重要な適応と考えられていましたが、遅筋線維の増加や神経伝達の不安定化を招く側面も知られており、個人差が運動機能に与える影響は十分に解明されていませんでした。
60歳以上の地域高齢者を対象とした測定手法
研究グループは、進行性の神経筋変性疾患である筋委縮性側索硬化症などの患者を対象に用いられている閾値電気緊張法を採用しました。この非侵襲的かつ短時間で評価できる手法を用いて、60歳以上の地域高齢者49名の短母指外転筋における運動単位リモデリングの程度を示す指標を算出しました。
短母指外転筋の筋力としてはピンチ力を測定し、偏相関分析によって運動単位リモデリングの指標とピンチ力との関連性を検討しました。さらに、性別の影響を考慮した男女別の探索的な解析も実施しました。
解析結果とバイオマーカーとしての可能性
分析の結果、運動単位リモデリング指標と筋力との間に有意な相関関係が認められ、運動単位リモデリングの程度が大きい高齢者ほど筋力が低く、程度が少ない高齢者ほど筋力が高いという一貫した結果が得られました。これは、再神経支配によって筋線維が救済されても筋力が必ずしも高く維持されるわけではない可能性を示しています。
また、運動単位リモデリングの評価は運動神経の加齢に伴う変性の程度を把握することにつながり、運動機能の個人差を反映する生理学的バイオマーカーとなり得ることが示唆されました。この指標は5分~10分程度の短時間で測定可能であり、探索的な解析では男性において特に感度の高い指標となる可能性が示されています。
今後の展望
研究グループは今後、筋量、運動神経の活動、運動神経の形態(運動単位リモデリング)が筋力に与える影響や相互の関連性について検証を進める方針です。また、加齢の影響をより顕著に受ける前脛骨筋や腓腹筋といった下肢の筋にも研究対象を広げ、高齢者の運動機能低下のメカニズムを包括的に明らかにし、運動機能を維持・向上させるトレーニング戦略の開発を目指すとしています。
掲載論文および研究情報
発表された論文の詳細は以下の通りです。
- 題目:Association between motor unit remodeling and inter-individual variability in muscle strength of older adults.
- 著者:Masahiro Kuniki¹ ² ,Kaito Igawa³, Yu-ichi Noto⁴, Ryosuke Takeda¹. Kohei Watanabe¹
- 所属:¹ Laboratory of Neuromuscular Biomechanics, School of Health and Sport Sciences, Chukyo University, Toyota, Japan / ² Research Fellow of Japan Society for the Promotion of Science, Chiyoda-ku, Japan / ³ Graduate School of Health and Sport Sciences, Chukyo University, Toyota, Japan / ⁴ Department of Neurology, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine, Kyoto, Japan
- 誌名:Journal of Applied Physiology
- 公表日:2026年9月11日 (Accepted date) / 2026年9月16日オンライン版掲載
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究B「使って残そう運動神経:プレシニア・シニアにおける運動習慣が運動神経数に及ぼす影響」および中京大学戦略的研究「運動神経と骨格筋という 2 つの観点から運動パフォーマンスを評価するシステムの構築と応用」(ともに研究代表者:渡邊航平)の成果の一部として行われました。
本記事は中京大学の発表をもとに作成しました。
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