千葉大、有機薄膜太陽電池における自発配向分極の作用の二面性を解明
千葉大学先進科学センターの深川弘彦 特任教授らの共同研究チームは、次世代の太陽電池として期待される有機薄膜太陽電池(OPV)において、分子が自発的に並ぶことで生じる自発配向分極(SOP)が及ぼす作用の二面性を解明しました。独自の平面接合型モデル素子を用いた検証により、SOPの内部電場が電荷分離を促進する一方で、SOP層の厚膜化により界面へ正孔が蓄積して励起子の失活による性能損失を引き起こすことが明らかになりました。本研究成果は、有機半導体を用いたOPV高性能化に向けた新たな設計指針を示すものとなります。
平面接合型モデル素子によるSOPの影響評価
OPVの高性能化には、電子を与えるドナーと電子を受け取るアクセプターが接するドナー/アクセプター(D/A)界面での効率的な電荷分離と、再結合や失活の抑制が重要とされています。近年は極性をもつ有機分子が自発的に配向して生じるSOPが注目されているものの、一般的な高性能OPVでは複雑な接合構造が用いられるため、SOP単独の影響を切り分けて評価することが困難でした。
そこで研究チームは、構造が単純な平面接合型素子を用いてSOPそのものの効果を選択的に調査しました。骨格と電子親和力がほぼ同等でSOPの大きさが異なるM2PTとM4PTをアクセプターに採用し、内部電場が発電特性に及ぼす影響を評価できるモデル系を構築しました。
電荷分離の促進と電荷蓄積による性能損失
検証の結果、大きなSOPを示す極薄のM4PT層をD/A界面に配置したところ、フィルファクター(FF)が0.47から0.77まで大きく向上し、電荷分離が促進されることが確認されました。
一方で、M4PT層を厚くすると膜厚内の電位差が大きくなり、低い電圧からドナー/M4PT界面に正孔が蓄積することが変異電流(DCM)測定により解明されました。この蓄積正孔が励起子–ポーラロン消光に類似した過程を引き起こし、性能低下につながることが示唆されています。本研究成果は、強い電場を設けるだけでなく、電場の適切な空間配置を行う重要性を示すものとなっています。
今後の展望とデバイス性能向上への期待
研究チームは今後、一般的なOPVと同様の複雑な混合型光電変換層において本指針の汎用性を検証する方針です。将来的には分子配向が自発的につくる内部電場を積極的に設計することで、電荷分離と電荷回収を高効率化し、有機太陽電池や有機光検出器などの有機光電デバイスの性能向上につながることが期待されています。
発表論文の概要
本研究成果は、2026年9月17日に国際学術誌Advanced Optical Materialsに掲載されました。
- タイトル:Spatial Control of Spontaneous Orientation Polarization for Efficient Charge Separation in Organic Photovoltaics
- 著者:Seita Kyogoku, Haruto Jibiki, Masahiro Ohara, Taku Oono, Takahisa Shimizu, Takeshi Okada, Nobumichi Arai, Hiroyuki Yoshida, Hisao Ishii, Hirohiko Fukagawa
- 雑誌名:Advanced Optical Materials
- DOI:10.1002/adom.71807
本記事は千葉大学の発表をもとに作成されています。
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