静大など、絶滅危惧の陸産貝類ムラヤママイマイの食性の一端をDNA解析で解明
静岡大学理学部の伊藤舜助教と糸魚川ユネスコ世界ジオパークの自然資源保全委員会吉田一郎委員長の研究チームは、新潟県糸魚川市明星山に固有の陸産貝類であるムラヤママイマイの糞中に残されたDNA情報から、食性の一端を解明しました。本種は個体数の激減によって国内希少野生動植物種等に指定されており、今回の成果は今後の保全策の策定や実施の方向性を示す知見となります。研究成果は2026年9月16日に国際雑誌「Molluscan Research」に掲載されました。
特異な形態から乱獲され危機的状況に
ムラヤママイマイは、新潟県糸魚川市明星山の岩壁だけに生息する大型の陸産貝類です。1971年に村山均氏により発見され、続く波部忠重博士による1976年の記載以後、極めて扁平で特異な形態から乱獲により激減したことが指摘されています。
現在では絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種、糸魚川市希少野生動植物保護条例に基づく特別指定希少野生動植物種、糸魚川ジオパーク自然資源の保護・保全の基本方針における貴重・希少野生動植物保護・保全対象種リストに指定されており、原則として捕獲、採取、殺傷、損傷、譲渡しなどが厳しく禁じられています。
糞のDNA解析から11種の植物を検出
研究チームは、糞中のDNAを対象としたメタバーコーディング解析を用いて食性の解明を行いました。
解析の結果、ムラヤママイマイの糞中から生息地に自生する8目11科11属11種の植物(ススキ、フサザクラ、アオツヅラフジ、クサボタン、ツゲ、キリンソウ、ヤマブドウ、シモツケ、エゾエノキ/エノキ、オニグルミ、ツルウメモドキ)が検出されました。中でも常緑性の低木であるツゲが高い頻度で検出されています。
植物の検出において夏と秋の季節による違いは見られなかったものの、夏の方が秋よりも個体レベルで検出植物のばらつきが大きく、利用する採餌場所や利用可能な植物由来の物質が季節的に変化する可能性が示唆されました。

生息域内外の保全活動への応用と今後の展開
多岐にわたる植物を利用することが明らかになったため、生息域内保全においては生息地内の植生全体を幅広く保護する必要性が示されました。また、十分な個体数まで増やせていない生息域外保全においては、検出された植物が効率的な保護増殖に有用となると期待されています。
静岡大学理学部の伊藤舜助教は、国内希少野生動植物種に指定された2019年度から続けられてきた保全活動に対して一つの方向性を示すことができたとし、指定解除を目指して保全活動を継続していく方針を示しています。
なお、今回の解析は植物の葉緑体の一遺伝子に着目したため、今後は菌類をはじめとする植物以外の分類群をターゲットにした解析を進めることで、基礎的生態のさらなる解明や保全活動の効率化につなげるとしています。
論文情報
- 掲載誌名:Molluscan Research
- 論文タイトル:Plant taxa detected in the faeces of the critically endangered Japanese land snail Euhadra murayamai using chloroplast DNA analysis
- 著者:Shun Ito, Ichiro Yoshida
- DOI:10.1080/13235818.2026.2732577
- 研究助成:環境省 生物多様性保全推進支援事業(国内希少野生動植物種生息域内保全)、糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業
本記事は静岡大学および糸魚川ユネスコ世界ジオパーク自然資源保全委員会の発表をもとに作成しました。
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