岡山大学の沈建仁教授が「東レ科学技術賞」を受賞

岡山大学高等先鋭研究院の異分野基礎科学研究所所長である沈建仁教授が、公益財団法人東レ科学振興会の「第64回(令和5年度)東レ科学技術賞」を受賞した。贈呈式は2024年4月20日に東京の日本工業倶楽部で行われ、沈教授夫妻のほか、岡山大学から佐藤法仁副理事・副学長・URAが参加した。

東レ科学技術賞は、理学・工学・農学・薬学・医学(臨床医学を除く)の分野で顕著な学術上の業績を挙げた研究者に授与される賞で、1960年から実施されている。これまでにノーベル賞受賞者の江崎玲於奈博士や野依良治博士、赤﨑勇博士らが受賞している。

沈教授は、シアノバクテリアから分離した光化学系II複合体の高分解能構造を解析し、水分解・酸素発生反応の触媒として中心的な役割を果たすマンガン・カルシウムクラスターの構造を明らかにした。また、X線自由電子レーザーやクライオ電子顕微鏡を用いて、この触媒中心の正確な構造や光照射に応じて起きる一連の構造変化を解明し、水分解・酸素発生反応機構の解明に多大な貢献をした。さらに、光エネルギーを高効率に捕集・供給するアンテナタンパク質を含む巨大な複合体の構造も解明した。

これら一連の研究業績は、天然光合成の機構解明の基礎を築いただけでなく、人工光合成における人工触媒の合成に重要な指針を与える国際的に卓越した研究であることが高く評価され、今回の受賞につながった。

岡山大学の那須保友学長は、沈教授の受賞を祝福するとともに、「より良い社会変革を実現するための研究・イノベーション活動を戦略的に推進している。沈教授の光合成の基礎研究とその先にある人工光合成は、まさに私たちの生活を一変する社会変革のひとつだ」とコメント。

岡山大学は、地域中核・特色ある研究大学として、沈教授らの研究活動を全力でバックアップしていく方針だ。