東京理科大など、GaN上にNbAlN単結晶薄膜の作製に初成功
東京理科大学、東京大学、三重大学の研究グループは、遷移金属ニオブ(Nb)を含む窒化アルミニウム(AlN)系半導体「窒化アルミニウムニオブ(NbAlN)」を、窒化ガリウム(GaN)上に単結晶の極性ウルツ鉱型薄膜として作製することに初めて成功しました。この成果により、遷移金属を含む極性窒化物の材料設計領域が広がり、GaN電子デバイスのキャリア密度制御に新たな選択肢が示されました。研究成果は9月3日に国際学術誌「Advanced Materials」のオンライン版に掲載されました。

AlNやGaNなどの極性ウルツ鉱型窒化物半導体は、高い絶縁破壊電界と強い分極特性を持ち、高出力・高周波電子デバイスの基盤材料として広く利用されています。一方で、部分的に電子が入ったd軌道を持つ遷移金属のNbは金属的な岩塩型NbNを形成しやすいため、AlNに取り込みながら四面体配位のウルツ鉱型構造と極性を維持することが課題とされていました。
研究グループは添加元素による電荷補償を用いない三元系NbAlNに着目し、反応性スパッタエピタキシーを用いてGaN基板上にNb含有量11~37%のNbAlN薄膜を作製しました。その結果、Nb含有量25%までは滑らかな表面とGaNに整合したウルツ鉱型結晶構造を維持できることが確認されました。
原子レベルでの極性と結晶格子の連続性を確認
Nbを23%含む約25 nm厚のNbAlN薄膜について、環状明視野走査透過電子顕微鏡(ABF-STEM)や高角度環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)、STEM-EDSを用いて解析が行われました。
観察の結果、NbAlN/GaN界面付近と膜上部の観察領域で、GaNと同じ金属極性の積層が保たれていることが判明しました。また、薄膜内にはNbに富むナノ領域が存在するものの、粒界や独立した結晶相を作らず、結晶格子が周囲と連続してウルツ鉱型構造の中に取り込まれていることが明らかになりました。
作製したNbAlNをバリア層として加えたNbAlN/AlGaN/AlN/GaNヘテロ構造を作製し、ホール効果測定を実施しました。775℃で成長させたNb含有量10%のNbAlNバリア層(厚さ13 nm)を導入した構造では、二次元電子ガス(2DEG)のシート電子密度が、NbAlNを用いない参照構造の約5.1 × 1012 cm−2から1.7 × 1013 cm−2へと3倍超に増加しました。
室温における電子移動度は、参照構造の1690 cm2 V−1 s−1に対し、775℃成長試料で1485 cm2 V−1 s−1を示し、高い電子密度と比較的高水準の移動度が両立しました。また、675℃で成長した試料でも電子密度は約9 × 1012 cm−2(移動度は644 cm2 V−1 s−1)となり、成長温度によって効果が異なることも確認されました。775℃成長試料は冷却後もシート電子密度がほぼ一定で、80 Kでは移動度が6800 cm2 V−1 s−1に達しました。
研究グループを主導した東京理科大学の小林 篤准教授は、結晶格子の連続性を保ったままGaNと同じ極性を維持できることを原子レベルで確認できたとし、GaNヘテロ構造のキャリア密度を設計する選択肢を広げる成果であると説明しています。今後は分極定数やバンドアライメントの測定、トランジスタ作製などを通じて動作機構とデバイス性能の解明を進めるとしています。
本記事は東京理科大学、東京大学、三重大学の発表をもとに作成。
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