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田中貴金属工業、名古屋大学との共同研究で近赤外・短波長赤外センシング向け鉛フリー貴金属量子ドット材料を開発

田中貴金属と名大、鉛不使用の赤外受光向け貴金属量子ドット材料を開発 27年1月提供へ

CATEGORY: テクノロジー

田中貴金属工業株式会社は、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学・鳥本研究室との共同研究により、近赤外領域の光に応答する、鉛(Pb)を使用しない貴金属量子ドット材料を開発しました。従来の鉛系量子ドット材料と同程度の受光波長範囲を持ちつつ鉛やカドミウム(Cd)を含まないため、民生用電子機器や医療分野への応用が期待されています。2027年1月よりサンプル提供を開始する予定です。

開発の背景と既存材料の課題

赤外光を用いたセンシング技術は、3Dセンシングやウェアラブルデバイス、スマートフォンの顔認証機能、自動車用LiDAR、生体センシングなど幅広い分野で応用が進んでいます。この受光材料として従来主に用いられているインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)は、波長1700 nmまでの赤外光を高感度で検出できる一方、真空プロセスを用いるなど製造工程が複雑で、量産時の歩留まりやコストが課題となっていました。また、インジウム(In)は最先端分野での需要拡大により、産出量の限界から安定供給が課題となっています。

代わって検討されている硫化鉛(PbS)を用いた量子ドット材料は、大面積化に適した印刷プロセスを適用でき、InGaAsと比較して10分の1程度のコストでセンサを製造できるとされています。しかし、PbSは人体への健康影響や環境負荷の懸念からRoHS指令の規制対象物質となっている鉛を含むため、民生用電子機器への採用が制限されていました。

開発した貴金属量子ドット材料の特長

開発された材料は、貴金属を主成分とする赤外受光可能な化合物半導体量子ドット材料です。真空プロセスを必要とせず印刷プロセスを適用できるため、製造工程の簡素化やプロセスコストの低減が期待できます。

田中貴金属の性能評価において、銀・硫黄・テルル(Ag-S-Te)量子ドットを簡易的な光センサの活性層(受光層)として実装したところ、波長1200~1700 nmの短波長赤外(SWIR)光に対して最高18.4%の外部量子効率(EQE)を達成しました。この波長帯は太陽光ノイズや悪天候の影響を受けにくく、人の目に対する安全性が高く、物質や生体内部を透過しやすい特長を持ちます。これにより、スマートフォンなどの民生用電子機器をはじめ、自動車用LiDARや生体センシングなどへの実用化が期待されます。また、同社は生体親和性の高い元素を用いた発光材料も開発しており、バイオメディカル用途での活用も見込んでいます。

田中貴金属は名古屋大学との共同研究を通じて、組成制御、粒子径制御、表面改質技術の開発を進めており、顧客の要望に応じた吸光・発光特性のカスタマイズやプロセス適合性の向上を図ります。

さらに、主成分となる貴金属に対して長年培ったリサイクル技術を活用します。製造工程の端材や使用済みサンプルから貴金属を回収・精製することで、導入時の初期評価コストや量産時のランニングコストの低減に寄与する方針です。

今後の展開と学会発表の予定

本材料は、2026年11月1日(日)~6日(金)に沖縄で開催される国際学会「Okinawa Colloids」、および同年12月16日(水)~18日(金)に開催される「nano tech 第26回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で紹介される予定です。田中貴金属は今後も性能向上と用途開発を進め、次世代センシングやバイオメディカル分野における社会実装を目指すとしています。

発表元情報

  • 田中貴金属工業株式会社(東京都中央区、代表取締役社長執行役員:田中 浩一朗)
  • 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(URL: https://www.nagoya-u.ac.jp/index.html)
  • 田中貴金属 産業用貴金属製品グローバルサイト:https://tanaka-preciousmetals.com
  • 製品問い合わせフォーム:https://tanaka-preciousmetals.com/jp/inquiries-on-industrial-products/

本記事は田中貴金属工業株式会社の発表をもとに作成されています。

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