日本女子大学、芥川龍之介自筆署名入りの洋書を受贈 松村みね子旧蔵全集が完揃いに
日本女子大学は、株式会社国書刊行会の協力・仲介のもと、英文学者の南條竹則氏から書籍1冊の寄贈を受け、10月8日(木)に受贈式を執り行いました。受贈した書籍は、同大学図書館が所蔵する「松村みね子旧蔵書」の全集『The Works of “Fiona Macleod”』(全7巻)のうち、長年欠本となっていたVol.2にあたります。書籍の見返しには芥川龍之介の自筆署名が確認されており、今回の受贈によって松村みね子の訳業に関わる全集が揃うこととなりました。
欠本となっていた第2巻を受贈し全7巻が揃う
日本女子大学図書館が所蔵する「松村みね子旧蔵書」は、歌人・翻訳家の片山廣子(筆名:松村みね子)と35年余にわたり親交を深めた同大学英文学科卒業生の川原信氏が、片山の没後に洋書を譲り受け、英文学科へ寄贈したものです。1958(昭和33)年3月28日以降の図書原簿には「松村みね子氏寄贈図書」として160冊の洋書が確認できますが、全集『The Works of “Fiona Macleod”』は第1巻と第3~7巻の6冊のみが記録され、第2巻は当初から欠本となっていました。
今回、南條氏から寄贈されたことで、長年未所蔵だったVol.2が補完され、同館が所蔵する全集が全巻揃うこととなりました。フィオナ・マクラウド著作の名訳として知られる松村みね子訳『かなしき女王』の収録作の多くは、この全集のVol.2『罪食い』に収められています。
芥川龍之介の署名や訳題の書き込みが残る寄贈資料
受贈された資料は、1912年にロンドンのWilliam Heinemannから刊行された『The Sin-Eater ; The Washer of the Ford and Other Legendary Moralities by Fiona Macleod ([i.e.] William Sharp), The Works of “Fiona Macleod”, Vol. 2 Uniform edition』です。


資料の見返しには、芥川龍之介の旧蔵書に見受けられる自筆署名(R, Akutagawa)と、縁が切手様のギザギザになった緑色の丸善の商標ラベルが確認されています。また、目次には8か所の×印があり、そのうち7つは松村訳『悲しき女王』の収録作に付けられています。さらに、同作の訳題にあたる「琴」「精」という2か所の文字の書込みも残されています。
なお、同大学が所蔵する第1巻および第3~7巻の標題紙には、片山廣子の筆名である松村みね子の旧蔵書を示す「片山蔵書印」があり、見返し左上端には紺色の丸善商標ラベルが貼られています。
片山廣子と芥川龍之介の深い関わり
片山廣子は大正13~14年の夏、避暑で訪れた軽井沢で芥川龍之介、室生犀星、堀辰雄らと出会い、文人同士の交流を深めました。芥川と片山の知的な魂の交感は作品にも表れており、芥川の『或阿呆の一生』に記された「彼は彼と才力の上にも格闘出来る女に遭遇した。が、「越し人」等の抒情詩を作り、僅かにこの危機を脱出した。それは何か木の幹につた、かがやかしい雪を落とすように切ない心もちのするものだった。」という一節は、片山について綴ったといわれています。
2027年は芥川没後100年の節目にあたります。日本女子大学は、両作家にゆかりのある1冊を文化資産として保管継承し、今後の研究の進展に貢献していくとしています。
関係者のコメントと資料散逸防止への連携

寄贈者の南條竹則氏は、かつて古書店で購入したサロジニ・ナイドゥの詩集に芥川の署名があることを英文学者の関川左木夫氏に指摘された際、関川氏が芥川の署名入り『罪食い』を所持していたエピソードを明かしました。関川氏の逝去後に関川節子夫人から譲り受けていたその書籍について、南條氏は「大事な本が然るべき場所に保管され、研究者の役に立つことを願っている」と述べています。

日本女子大学図書館長の北村暁夫教授は南條氏への感謝を表すとともに、芥川が本書を入手した経緯についての調査・研究に期待を寄せ、「残りの6巻とあわせて図書館に展示する機会を設けるとともに、本書を学内外での教育・研究活動に資するように努める所存です」とコメントしました。
今回の寄贈は、海外文学や幻想文学を中心に美術・歴史関係書籍などを手がける株式会社国書刊行会が調整と橋渡しを担いました。出版界と学術界が連携し、貴重な文学史的資料の散逸を防いで大学図書館へ継承する取り組みとなりました。
本記事は学校法人日本女子大学および株式会社国書刊行会の発表をもとに作成しました。
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