森永乳業ら、産後のαディフェンシン分泌量と母親の気分状態の関連性を確認
北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則教授と森永乳業の研究員らのグループは、産後数日時点の母親の腸内におけるαディフェンシン分泌量が多いほど、産後1か月時点の気分状態が良好であることを明らかにしました。北海道岩見沢市の母親48名を対象とした追跡調査により、妊娠中期における特定の食成分の摂取量が産後のαディフェンシン分泌量と関連することも確認されています。本研究成果は、女性の健康に関する国際的な学術誌『npj Women’s Health』に2026年8月27日に掲載されました。
腸内細菌叢の制御因子に着目した母子調査
本研究は、岩見沢市がめざす健康経営都市の実現推進に向けて、出生率の向上と低出生体重児の減少を目的に2017年から開始された「岩見沢母子健康調査(SMILE Iwamizawa)」のデータをもとに実施されました。北海道大学が参画する産学官連携の「食と健康の達人」プロジェクトの一環として進められたものです。
腸内細菌叢と脳機能や精神状態が影響し合う「脳腸相関」において、小腸のパネト細胞から分泌される抗菌ペプチド「αディフェンシン」は腸内細菌叢のバランスを制御する役割を担っています。研究グループは、妊娠中の日常的な食事を通じたαディフェンシン分泌の促進が、周産期のメンタルヘルス形成に関与するという仮説を立て、妊娠中期から産後1か月までの追跡調査を行いました。
産後の分泌量と良好な気分状態に関連
調査では、母親48名から妊娠中期(4~5か月)、産後数日(3~5日)、産後1か月に提供された便検体を解析し、ヒトのαディフェンシンであるHD5(human defensin 5)の濃度と腸内細菌叢の組成を調べました。さらに、気分プロフィール検査(POMS2)を用いて産後1か月時点の気分状態を評価しました。
解析の結果、母親のαディフェンシン分泌量は妊娠中期から産後数日にかけて有意に増加することが判明しました。また、産後数日時点のαディフェンシン分泌量が多い母親ほど、産後1か月時点の混乱・当惑や緊張・不安といったネガティブな気分状態の程度が低く、PeptostreptococcaceaeやParamuribaculumといったネガティブな気分状態に関係する腸内細菌群の存在量が少ない傾向が示されました。
妊娠中期の食事の影響と今後の期待
妊娠中期の食習慣に関する質問票の分析からは、動物性タンパク質やビタミンB群(ビタミンB2、ナイアシン)の摂取量が多く、ショ糖の摂取量が少ない母親ほど、産後数日時点のαディフェンシン分泌量が多いという関連が確認されました。これにより、妊娠中の食事が産後のαディフェンシン分泌に関わる可能性が示唆されています。
研究グループは今後、妊産婦への栄養教育介入による実証的な検証や、αディフェンシンの分泌を促す食成分の探索が進むことで、日常の食生活を通じたセルフケアによる周産期メンタルヘルス失調の予防アプローチの確立や、プレコンセプションケアを通じたライフデザインの基盤づくりにつながることが期待されるとしています。
本記事は森永乳業の発表をもとに作成されています。
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