卓球Tリーグが7年目、世界レベルの戦いを身近に、そして新たな可能性へ
2018年に発足したTリーグは、今シーズンで7年目を迎えている。日本人選手が世界トップクラスの実力を誇る卓球界において、国内トップレベルの戦いを提供し続けてきた同リーグ。その現在地と今後の展望について、一般社団法人Tリーグ 広報宣伝部部長の江島彰弘さんに話を聞いた。
拮抗する男子リーグ、国際舞台で活躍する女子リーグ
2024-2025レギュラーシーズン、男子はこれまでのシーズンで強さを見せてきた木下マイスター東京と琉球アスティーダに加え、他チームも互角の戦いを展開。勝ち点差がない中で接戦が続いている。一方の女子は、上位チームと下位チームの差が開いている。上位チームの選手たちは国際大会でも目覚ましい活躍を見せており、それがリーグの成績にも表れていると言える。いずれにせよ卓球は、オリンピックで活躍を目にするだけのものではなくなっている。U-NEXTとAmazon Prime Videoでは全試合配信がされており、さらに身近な存在になった。
新たなファン層の開拓
「従来の卓球の試合は、静かに見守る雰囲気が一般的でした。しかしTリーグの試合では、ラリーが続くたびに『オー』といった声が上がる。こうしたことから、試合を見に足を運んでくれるファンの裾野が広がっているのは感じています」と江島さんは語る。
また、Tリーグ誕生によって、卓球に対するファンの楽しみ方に多様性が出てきているようだ。例えば、世界ランキング7位(2024年12月3日現在)、オリンピック代表候補として期待される張本美和選手(木下アビエル神奈川)は、リーグ発足時はまだ小学生。「最初はおどおどしていた子が、今や立派になったのは感慨深い」と江島さんは笑う。かつてであれば福原愛選手や石川佳純選手などがそうだが、幼い頃から活動してきた選手の成長を楽しんできた人は多いと思う。そうした、“推し活”のような楽しみ方 は、これまではオリンピックの度に注目されてきたが、リーグとして卓球がより身近になったことで顕著になった。
「フィジカルだけで決まらないので、小学生でも大人と戦える。他のスポーツではなかなかない特徴ですよね」と江島さん。実際、Tリーグには小学生から社会人まで、様々な年齢の選手が参戦しており、そうした幅広い世代での戦いは、卓球という競技が持つユニークな魅力だ。
個人競技ならではの課題に向き合う
一方で課題もある。例えば地域密着という観点。Tリーグのチームの多くは静岡、琉球、京都といった地域名を、チームの名に冠している。だが、世界を転戦する選手たちが多く、そもそもが個人競技であるため、地元での活動時間が限られるという現実があり、チームと地域がリンクしづらい(ただし、最近では地元での練習や活動を積極的に行うチームも出てきて、それがチームごとの特色となっているものの)。スポーツ興行として拡大する方法の一つは、地域と繋がることだが、卓球ではそのハードルが高いと言える。
また、「会場に足を運ぶ人=卓球をする人」が多いのが、現在の卓球観戦の課題でもあるという。競技者だけをターゲットにしていては先細りになってしまうからだ。
新たな可能性を探る
こうした課題に対し、Tリーグでは様々な取り組みを行っている。その一つが「1万人招待キャンペーン」。「初めて観戦する人に来てもらい、卓球自体の面白さでも、それ以外の部分でも、何か興味を持ってもらえれば」と江島さんは期待を寄せる。Tリーグの卓球は間違いなく世界トップレベルにある。それを生で見る機会が増えたのは素晴らしいことだ。そのため次は、会場に足を運んでくれる人をどうやって増やすかを考えるフェーズにある。Tリーグでは今後、会場でのコンテンツを増やすなどし、試合以外にも楽しみを感じてもらえる施策に力を入れていくという。
また、2022年からは「ウエルネスパートナー」というパートナーシップがスタートし、今シーズンからイオンリテール株式会社や国分グループ本社との契約締結がなされた。「卓球は老若男女誰でもできるスポーツ。場所もあまり取らない。健康増進という観点からも、可能性を秘めています」と江島さん。「卓球を通じて人生を豊かにする」というTリーグの理念の実現に向け、社会課題への取り組みにも力を注いでいる。
世界レベルの戦いを身近に感じられる場として、そして新たな可能性を秘めたスポーツとして。Tリーグの挑戦は続く。
Tリーグ 公式サイト
https://tleague.jp