松尾研究所とイトーキ、AIで働き方と生産性の因果を分析する推定モデルを構築
東京都文京区に本社を置く株式会社松尾研究所(代表取締役:川上 登福)と、東京都中央区に本社を置く株式会社イトーキ(代表取締役社長:湊 宏司)は、生産性に関する共同研究の最新成果を発表しました。

本研究ではAIを活用し、854名の日々の仕事から生まれる70種類の行動データを抽出して、生産性向上の因果関係を探索する「データ駆動型生産性推定モデル」を構築しました。分析の結果、会議は長さより数が翌日の心のコンディションに影響することや、60分以上集中して作業できた日は全職種で88%の従業員において翌日の心のコンディション向上が確認されるなど、働き方改善に向けた新たな知見が得られています。
行動データと時系列因果探索手法によるモデル構築
人的資本投資が進む中、従業員の生産性を測定して改善することは企業の課題となっています。イトーキでは従来サーベイを中心に状態を捉えてきましたが、改善に向けた因果関係の特定には課題がありました。そこで両社は2025年、主観的なサーベイに頼らず客観データを活用して因果関係を探索する共同研究を開始しました。


今回の研究では、イトーキの本社オフィスで働く854名を対象に2025年12月1日から12月31日までデータを取得しました。オフィス内での移動回数、会議の時間や数、メール・チャットの頻度など、70種類の行動データを抽出しています。
モデルの中核には、時系列の因果探索手法「VAR-LiNGAM」(データの分布の偏りを手がかりに因果の向きを推定する手法「LiNGAM」を時系列に拡張したもの/Hyvärinen, Zhang, Shimizu & Hoyer, 2010, Journal of Machine Learning Research)を採用しました。「設計・開発・企画」「営業・サービス」「管理」の3種類の職種に分け、1日ごとのデータから「今日の行動→翌日の状態」という向きと時間差を推定して職種ごとに重ね合わせることで、多くの従業員で共通する関係を抽出しています。
会議の数や集中作業時間が翌日のコンディションに及ぼす影響
分析の結果、3職種すべてにおいて、会議の数が多かった日は翌日の心のコンディション低下が確認されました。今回の分析では、会議の総時間よりも「会議がいくつ入っているか」の影響が強く表れており、会議の数を減らす視点も重要であることが示されています。
一方で、会議などに中断されず60分以上まとまって作業できた日には、「設計・開発・企画」「営業・サービス」「管理」の分析対象のうち88%の従業員で翌日の心のコンディション向上が確認されました。会議時間を短縮するだけでなく、中断されない作業時間を確保することが重要である結果となっています。

デジタルコミュニケーションにおいては、発信と受信で異なる影響が見られました。特に「営業・サービス」職では、メール・チャットの受信が多い日に組織内の人間関係や体のコンディションなど複数のコンディション低下が見られた一方、自分からオンラインで発信する行動は組織内の人間関係のコンディション向上に影響していました。
なお、以下の行動については組織全体でアウトプット(従業員一人ひとりの能力発揮度)に一貫した因果が見られず、一律に影響するわけではないことも捉えられました。

- オフィスにいる時間の長さ
- 休憩エリアを利用する回数
- メール・チャットへの返信の速さ
- デジタルにつながっている時間の長さ
今後の展開と活用
今後は、構築したモデルを異なる職種、拠点、企業へ展開し、精度と適用範囲を高める方針です。イトーキが培ってきたオフィスづくりや運用のノウハウと組み合わせ、各社の目標や特性に応じた空間構築や運用施策の提案を進めるとしています。
両社の概要は以下の通りです。
- 株式会社松尾研究所:国立大学法人 東京大学大学院 工学系研究科 松尾・岩澤研究室に伴走し、アカデミアの研究成果・技術の開発・実装を行う(所在地:東京都文京区、代表取締役:川上 登福、URL:http://matsuo-institute.com)
- 株式会社イトーキ:1890年創業。オフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、働き方コンサルティング、オフィスデータ分析サービスなどを展開(所在地:東京都中央区、代表取締役社長:湊 宏司)
本記事は株式会社松尾研究所の発表をもとに作成しました。
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