大型資本プロジェクトの80%超が予算超過 A.T. カーニーが論考を公開
A.T. カーニー株式会社は、論考『大型資本プロジェクトには新たな契約ロジックが必要である』(英題:Large capital projects require new contracting logic)を公開しました。同論考では、大型資本プロジェクトの80%超が当初予算を大きく上回っている現状を指摘し、その要因が市場環境だけでなくプログラムの構造化や統治、実行のあり方にあるとしています。新技術の導入や工期圧縮が進む環境において、従来の契約モデルが協働を阻害する可能性を挙げ、新たなアプローチの必要性を提起しています。
80%超で予算超過が発生する現状と市場の逼迫
論考によると、大型資本プロジェクトの80%超は当初予算を大きく上回っており、その超過の大半は計画、統治、実行上の問題に行き着くとしています。市場要因は変動的であるものの、コストや工期の乖離に占める割合は少数にとどまります。
一方で、産業をまたいだ資本投資が設計、建設、設備市場への圧力を強めています。北米のデータセンター支出だけでも2029年までに3兆ドル近くへ達すると見込まれるほか、発電、送電網更新、先端製造、物流ネットワークでも同様の成長が見られます。こうした遂行能力の逼迫により、従来の契約構造のみで予見可能な成果を確保することが難しくなりつつあります。
従来型契約におけるリスク偏重の課題

従来の契約構造は、リスクを過度にまたは全面的に一方当事者へ割り当てる傾向があります。固定価格契約と上限額契約(NTE)は実行リスクを請負者へ負わせ、工数・実費精算型契約(T&M)は発注者側へ負わせる形をとります。
この分離は協働や共同での問題解決を妨げる誘因を生むと指摘されています。誘因が共有されない場合、問題が重大化するまで見過ごされやすく、正式な是正報告や会議で表面化する頃には解決策より責任帰属に重心が移りがちになります。特に新技術やなじみの薄い地域、初めての請負関係、制約の強い調達市場、工期主導の工程が重なる局面では、調整負荷が高まり軌道修正の猶予が狭まります。

約600億ドル規模の分析で示されたリスク共有型の効果
リスク共有型契約は、計画段階から完工まで発注者と遂行パートナーの成果を結びつけるモデルです。プロジェクト成果が目標を上回れば双方が利益を得て、下回れば双方が影響を引き受ける仕組みとなっています。
約600億ドルの資本投資に相当する300件超の共有リスク型インフラ・産業プロジェクトの分析では、低い失敗率と、一桁台半ばの性能改善が報告されています。これは問題の早期可視化や迅速な共同意思決定、実行破綻の減少につながるためとされています。ただし、設計が成熟し技術がなじみ深く調達市場に余力がある場合は従来型構造でも予見可能な成果を生み得るため、条件に応じた選択が求められます。
論考の概要と執筆体制
今回発表された論考の概要および監修者は以下の通りです。
- 論考名:『大型資本プロジェクトには新たな契約ロジックが必要である』(英題:Large capital projects require new contracting logic)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/large-capital-projects-require-new-contracting-logic
- 監修者:笹俣 弘志(A.T. カーニー シニアパートナー、エネルギー・素材プラクティス東京リーダー)
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、東京都港区に拠点を置き日本代表を針ヶ谷 武文が務める経営コンサルティングファームです。世界40カ国以上に拠点を展開し、1972年に日本へ進出しています。
本記事はA.T. カーニー株式会社の発表をもとに作成しました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



