アボット、心房細動向けVolt PFAシステムを発売
アボットメディカルジャパン合同会社は、薬物治療で十分な効果が得られない発作性心房細動および持続性心房細動に対する「Volt™ PFAシステム」が11月1日に保険収載され、販売を開始したことを2026年11月4日に発表しました。同システムはパルスフィールドアブレーション(PFA)技術を採用し、全身麻酔に依存しない柔軟な麻酔管理下での使用可能性が報告されています。効率的なエネルギー伝達によって治療室滞在時間や手技時間の短縮が示されており、医療現場の効率的な運用への貢献が期待されています。
心房細動治療における新たな技術と麻酔管理の特徴
心房細動は不整脈の中で最も有病率が高く、国内の推計有病者数は100万人以上とされています。脳梗塞による入院リスクが約5倍、心不全による入院リスクが約18倍高くなることが知られており、国内のカテーテルアブレーション件数は年間10万件を超えています。

PFAは標的部位に高電圧の電気パルスを照射する技術で、従来の熱や冷凍エネルギーを用いる手法と異なり、周辺組織への影響リスクを抑えながら治療を行える点が特徴です。海外で実施されたVOLT-AF IDE試験およびVOLT CE Mark試験では、意識下鎮静または深鎮静下でVoltを使用した施術において、全身麻酔と比較して急性期の肺静脈隔離術(PVI)成功率と主要安全性イベントに有意な差を認めず、治療室滞在時間が約18%短縮(平均31.9分短縮)、手技時間が約14%短縮(平均16分短縮)したことが示されました。
Voltは独自の「Balloon-in-Basket」(バルーン内蔵型バスケット)構造を備えています。8本のスプラインすべてから同時に通電することも、標的組織に接触しているスプラインのみを選択して通電することも可能です。これにより血液への不要なエネルギー伝達を抑え、少ない通電回数で効率的な治療を行えるよう設計されています。また、臨床試験において臨床的に問題となる溶血は認められませんでした。
加えて、3Dマッピングシステム「EnSite™ X EPシステム」および心腔内エコーカテーテル「ViewFlex™ X ICEカテーテルSE」との連携が可能です。心臓の電気活動、心腔構造、Voltの位置情報、リアルタイムの心腔内エコー画像を単一プラットフォーム上に統合表示し、医師の治療状況把握を支援します。
海外臨床試験の成績と国内での実施状況
米国、欧州、カナダ、オーストラリアの約40施設で392名を対象に実施されたVOLT-AF IDE試験では、以下の成績が示されています。
- 術後7日以内に発生したデバイスまたは手技関連の重篤有害事象の発生率は1.9%
- 臨床的に問題となる溶血や腎障害の報告はなし
- 12カ月時点での心房細動、心房粗動、心房頻拍の再発抑制率は発作性心房細動で81.1%、持続性心房細動で64.4%、再アブレーション率は5.9%
- 生活の質を測るAFEQTスコアは施術後に発作性心房細動で63.6から91.4へ、持続性心房細動で64.2から91.4へと有意に改善
Voltは2025年3月に欧州でCEマークを取得し、同年12月に米国でFDAの承認を取得して現在約90カ国で使用されています。国内では、東京医科大学病院(里見 和浩 医師)、榊原記念病院(新田 順一 医師)、山梨大学医学部付属病院(黒木 健志 医師)、大阪医療センター(井上 耕一 医師)、大阪けいさつ病院(南口 仁 医師、神田 貴史 医師)でVoltを用いたPFAがすでに実施されました。
医療現場と関係者の見解
東京医科大学病院の副院長で不整脈センター センター長を務める里見 和浩 主任教授は、Voltの電極選択設計やバルーン内蔵型バスケット設計による効率的で安定したエネルギー送達と溶血の抑制に触れ、「こうした特長が、治療成績に妥協することなく、患者さんの負担軽減や安全性の向上につながることを大いに期待しています」と述べています。
アボットメディカルジャパン合同会社の代表執行役員社長でEP事業部長を務めるレイチェル・トレースは、Voltが操作性や手技の効率性、安定した治療成果への高まるニーズに応えるべく開発されたとし、同社ポートフォリオとの連携によって精度の高い手技を支援していく姿勢を示しています。
製品情報および企業概要
- 販売名:Volt PFAカテーテルSE(承認番号:30800BZX00238000)
- 販売名:Current PFAジェネレータ(承認番号:30800BZX00237000)
- 企業名:アボットメディカルジャパン合同会社(本社:東京都港区)
本記事はアボットメディカルジャパン合同会社の発表をもとに作成されています。
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