A.T. カーニーがハイテク製造業の供給計画に関する論考を公開
経営コンサルティングファームのA.T. カーニー株式会社は、論考『生産前に失われる売上、ハイテク製造業の供給計画が抱える課題』(英題:Revenue lost before production starts: the supply planning challenge in high-tech manufacturing)を公開しました。
本論考では、ハイテク製造業における売上損失の原因が生産現場だけでなく、生産が始まる前の計画プロセスに潜んでいると指摘しています。需要予測の精度向上だけに頼らず、部材の入手可能性や生産設備、人員の能力を踏まえた実現可能な供給量を共通の基準に据え、需要計画、供給計画、組織・システムを一体で見直す改革を提言しています。
需要予測の精度だけでは防げない生産前の売上損失
本論考によると、企業の73%がサプライチェーンの問題による売上損失を報告しており、多くの企業ではその損失が売上全体の2~5%に及ぶと報告されています。ハイテク製造業においては、需要予測の変更や複数段階での余裕分の積み増し、製造部門との手作業による調整が、生産前から売上損失の原因をつくっていると分析されています。欠品や過剰在庫として問題が表面化した時点では、その要因となる意思決定が数カ月前に行われていることも少なくない状況です。
論考内の例として、顧客から20万台の注文を受けた企業がそのまま製造委託先に数量を伝えて部材手配を進めたものの、半導体の供給制約により期間内に生産できたのが10万台にとどまったケースが挙げられています。この場合、10万台の納入不足が生じるだけでなく、生産できない残り10万台分の部品在庫も抱えることになり、需要量をそのまま供給計画に置き換える構造が供給不足と過剰在庫を同時に招くと示されています。
実現可能な供給量を基準とした需要・供給・組織の一体改革
本論考が提示する改革は、需要計画、供給計画、組織・システムという相互につながる3領域におよびます。需要計画では当初の予測に固執せず、実際に生産可能な数量や製品構成、納期を踏まえて顧客と調整を行うことが求められます。供給計画では、供給制約を織り込む前の需要量から計画を切り離し、「実現可能な供給量」を基準として基準生産計画と調達計画を策定します。受注残や余裕分についても同じ供給量を基準に管理することで、実現できない納入約束の繰り越しや余裕分の重複を抑制します。

これらの改革を支える仕組みとして、需要と供給を同時に検討できる共通の計画基盤と、計画と実行の役割分担が重要視されています。需要と供給の差分を部門横断で継続的に確認し、AIなどのツールを活用してシナリオ生成や例外の抽出、納入確約前の実現可能性の検証を行うことで、供給計画の担当者がより根拠のある数量を提示できるようになるとしています。
製造委託先との連携見直しと段階的な改革推進
製造委託先との連携においては、情報交換の頻度以上に共有する情報の質が重要であると指摘されています。あるハイテクOEMの事例では、代表的な製品群の予測数量が13週間にわたって毎週変動したものの、最終的にはほぼ当初と同じ数量に戻り、そのたびに製造委託先で部材所要量の再計算や納期の調整が発生していました。本論考では、「実現可能な供給計画」を共有したうえで、月1回の実質的な更新と重要な変化に対する例外対応を組み合わせる手法が提案されています。
また、改革の進め方として、新たなツールの購入ではなく現状の計画プロセスの評価が出発点になると述べています。あるグローバルなハイテク機器メーカーでは、優先する製品領域で供給可能量と計画の差分を評価した結果、解消による売上改善余地が数億ドル規模と見込まれ、対象製品を絞ってモデルを検証してから展開する進め方が採用されました。現在の業務の再現ではなく、目指す計画プロセスに沿って仕組みを設計することが重要だとしています。
公開論考の概要
論考の概要は以下の通りです。
- 論考名:『生産前に失われる売上、ハイテク製造業の供給計画が抱える課題』(英題:Revenue lost before production starts: the supply planning challenge in high-tech manufacturing)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/revenue-lost-before-production-starts-the-supply-planning-challenge-in-high-tech-manufacturing
- 監修者:西川 覚也(シニアパートナー)、濱口 典久(シニア パートナー)
本記事はA.T. カーニー株式会社の発表をもとに作成しました。
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