Helical Fusionと独Gauss Fusionが実用化へ共同趣意書締結
東京都千代田区に本社を置く株式会社Helical Fusionは、ドイツのフュージョンエネルギー開発企業Gauss Fusionと、ヘリカル方式・モジュラーステラレーター方式の実用化に向けた共同趣意書(Joint Statement of Intent)を取り交わしました。

本取り組みは、日独首脳会談に関連する共同声明関連文書においても言及されています(外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/erp_2/de/pageit_000001_03282.html)。両社は技術や開発戦略の独立性を尊重しながら、日本とドイツの研究成果と産業基盤を活かし、民間企業主導によるフュージョンエネルギーの実用化を推進していく共通の意思を示しています。
日独の研究蓄積を背景とした民間主導の実用化
ヘリカル方式とモジュラーステラレーター方式は、主に外部コイルによってプラズマを閉じ込める磁場を形成するため、長時間・定常運転に適しており、商業用フュージョン発電を実現する有力なアプローチの一つとされています。
日本とドイツは同方式の研究において長年の実績を有しており、日本では核融合科学研究所(NIFS)の大型ヘリカル装置(LHD)、ドイツではマックス・プランク・プラズマ物理研究所(IPP)のWendelstein 7-X(W7-X)などを通じて世界有数の研究成果が蓄積されてきました。Helical FusionとGauss Fusionはこうした蓄積を背景に商業化を目指しており、研究機関や産業界との連携を重視しながら、両国の研究開発成果を将来の発電所の建設や運転へとつなげていく方針です。
共同宣言における3つの主な内容
今回取り交わされた共同宣言の主な内容は以下の通りです。
- 民間主導によるフュージョンエネルギー実用化の推進:日独の研究機関等が培ってきた科学的・技術的成果を基盤に、民間企業が主体となって開発・実証を推進し、将来のフュージョン発電所の建設・運転につなげていくことを目指す。
- 対話・協力の深化:日本とドイツが有する研究開発力と産業技術を活かし、両社間の対話を深めるとともに、フュージョンエネルギーの実用化および関連産業の発展に向けた協力機会を検討する。
- 関係機関・産業界との連携:政府、研究機関、産業界、投資家などに対し、民間主体が主導するヘリカル方式およびステラレーター方式によるフュージョンエネルギーの実用化について発信する。共通の目標を有する他の企業や研究機関との連携についても引き続き可能性を探る。
本共同宣言は両社の共通の意思を示すものであり、法的拘束力を伴うものではありません。両社はそれぞれ独立した技術開発や事業活動を継続し、具体的な技術協力や事業上の連携については必要に応じて個別に協議・合意するとしています。
Helical Fusionが推進する「ヘリックス計画」
株式会社Helical Fusionは、2021年に大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)における研究成果を活用する形でスピンアウトし創業した企業です。代表取締役CEOは田口昂哉氏が務めています。なお、NIFSは大型プラズマ実験装置「大型ヘリカル装置(LHD)」において、3,268秒間(約54分間)にわたるプラズマの維持や1億度を超えるプラズマ温度の達成などの知見を蓄積してきた公的研究機関です。


同社は「日本にもうひとつ太陽をつくろう。」というメッセージのもと、「ヘリックス計画(Helix Program)」を推進しています。2020年代中をめどに二大開発要素である「高温超伝導マグネット」「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了させ、2030年代中には最終実証装置「Helix HARUKA」による統合実証、および発電初号機「Helix KANATA」による世界初の実用発電を達成する見通しとしています。

現在、核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の敷地内にある専用スペースにおいて、「Helix HARUKA」による高温超伝導マグネット実証に向けた製造・建設が進められています。また、実用発電のための要件として「定常運転(24時間365日運転可能な安定性)」「正味発電(プラントの外に電力を供給できる)」「保守性(メンテナンスが可能)」の三要件を掲げ、逆算した設計に基づき開発を進めています。
国際エネルギー機関(IEA)の年次報告書「2023年版世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook 2023)によると、世界人口は2050年までに約17億人増加すると予測されています。生成AIの普及などを背景に電力需要の急増が見込まれるなか、フュージョンエネルギーは海水等から採取可能な燃料を用い、CO2排出がない発電方法として期待されています。核融合プラント建設および電力市場は2050年までに世界で数百兆円規模にまで成長するとの試算もあります(FusionX/Helixos report Global Fusion Market Analysis: Electricity, Supply Chain & Construction:https://fusionxinvest.com/data-analysis/analysis/)。
日本国内においては、2025年10月に発足した高市早苗総理大臣が率いる政権のもと、所信表明演説で「次世代革新炉や核融合エネルギーの早期社会実装」が明記されました。同年6月には内閣府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」改定で2030年代の発電実証を目指すロードマップが示されたほか、重点投資対象17分野に挙げられ、2040年までに3.1兆円の官民投資が目指されるとともに、直近3年間で600億円の経済産業省主導補助金制度が公募されるなど、産業化に向けた動きが進められています。
本記事は株式会社Helical Fusionの発表資料をもとに作成しています。
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