南信州が世界の持続可能な観光地100選に2年連続選出 民俗芸能の継承モデル評価
長野県飯田市の地域DMOである株式会社南信州観光公社は、国際的な持続可能な観光認証機関「Green Destinations」(本部:オランダ)が選定する「世界の持続可能な観光地100選 2026(Green Destinations Top 100 Stories 2026)」に、「南信州」エリアが昨年に続き2年連続で選出されたことを発表した。過疎・少子高齢化により存続が危ぶまれていた民俗芸能を観光消費に終わらせず、次世代への継承と地域の自立につなげた「持続可能な循環モデル」と広域連携のあり方が評価されたとしている。
担い手不足に直面した民俗芸能の背景



南信州は日本アルプスの急峻な山々と天竜川に囲まれ、古くから東西の文化が交わる結節点として、中世の信仰を色濃く残す「遠山の霜月祭」や、近世に都市部から伝わった「大鹿歌舞伎」「黒田人形」など幾層もの芸能が受け継がれてきた。昭和初期に民俗学者・折口信夫が現地調査を行い、古代の呪術儀礼から中世の猿楽・神楽に至る発展の諸段階が凝縮されていると位置づけて以来、日本芸能史の縮図と称されている。現在、長野県内にある10件の国指定重要無形民俗文化財のうち6件が南信州に存在する。
一方、過疎化と少子高齢化が進むなか、特定の家系や地域住民だけが祭りに携わる厳格な継承制度が担い手不足を加速させる要因となり、集落では共同体の絆が途絶える危機感が高まっていた。これに対し地域では、芸能の固定的な保存や見世物化ではなく、地域コミュニティのウェルビーイングの向上を目的とした動的な循環の仕組みづくりが進められた。






教育連携や門戸開放など3つの取り組み
持続可能な継承に向けて、主に3つの取り組みが行われている。
- 教育への組み込み:大鹿村では、2017年に国の重要無形民俗文化財に指定された「大鹿歌舞伎」を中学校の「総合的な学習の時間」の通常カリキュラムに導入し、生徒が舞台の中心的な役割を担うことで若い世代が直接継承に参加している。
- 閉鎖性からの脱却:一部の地域の伝統芸能で地域外からの移住者の参加を受け入れ、住民が直接技術を伝える共生型モデルが広がっている。
- 観光ガバナンスと財政循環:無制限な観光による文化の消費財化や住民生活への負荷を防ぐため、地域DMOの主導でツアーの受け入れ人数に厳格な上限を設けている。観光収益の一部は祭具の修繕や道具の維持管理に直接再投資されている。
若者の回帰と広域継承ネットワークの設立
次世代育成の取り組みにより、伝統文化が若者のアイデンティティとして定着し、進学等で一時的に地域を離れた若者が祭りのために移住・帰郷する例や、生活拠点を地域外に置きながら祭りのたびに帰郷して関わり続ける例が見られるようになった。
また、国や県の指定を受けていない小規模な民俗芸能までを包摂する文化財ネットワークとして「南信州民俗芸能継承推進協議会」が設立され、広域観光地域づくりに向けた動きも進められている。
南信州の主な無形民俗文化財
南信州エリアに伝わる主な文化財と実績は以下の通りとなっている。
- ユネスコ無形文化遺産(2022年、「風流踊」として登録):新野の盆踊り、和合の念仏踊り(いずれも阿南町)
- 国指定重要無形民俗文化財:新野の雪祭り(1977年)、天龍村の霜月神楽(1978年)、遠山の霜月祭(1979年)、新野の盆踊り(1998年)、和合の念仏踊り(2014年)、大鹿歌舞伎(2017年)
- 受賞歴:大鹿歌舞伎が地域伝統芸能大賞(1998年度・第6回)、サントリー地域文化賞(2020年度・第42回)を受賞
本記事は株式会社南信州観光公社の発表をもとに作成しています。
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