ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の敷地全体が重要文化財指定へ

株式会社淀川製鋼所が所有するフランク・ロイド・ライト設計の「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」(1924年竣工、兵庫県芦屋市)の敷地が、2024年5月17日に開催された文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、重要文化財に追加指定されることが文部科学大臣に答申された。今後、官報告示を経て正式に指定される予定だ。

主屋は1974年5月に既に重要文化財に指定されており、今回の指定により敷地全体が国指定重要文化財となる。竣工から100年、主屋の重要文化財指定から50年という節目の年に、ヨドコウ迎賓館の敷地環境に新たな文化的価値が認められることとなった。

東側敷地(非公開)には、主屋と同じ大谷石で装飾された階段や擁壁、半地下の鉄筋コンクリート造の建物が現存していたが、文化財の指定から外れたままだった。淀川製鋼所は、これらの遺構の保存方法について兵庫県や芦屋市、有識者と協議を行うとともに、神戸大学名誉教授の足立裕司氏に周辺環境の調査を依頼した。

現地調査の結果、前面道路の拡幅や建物の建設により消失したと考えられていた「温室跡」や「渡り廊下跡」、「滝の跡」、「池の跡」など新たな遺構が発見された。これにより、東側敷地の付属建物や施設が主屋と一体として設計され、庭園としての機能を有していたことが判明した。ライトの建築理念である「自然環境と調和した有機的建築」を評価する上で、主屋だけでなく敷地環境全体を包含して理解することの重要性が確認され、今回の答申に至った。

今後、淀川製鋼所は行政や有識者と連携し、出土した遺構の詳細調査および敷地全体の保存・活用方法について検討を進める予定だ。

フランク・ロイド・ライトは、20世紀を代表する近代建築の三大巨匠の一人で、「有機的建築」を提唱した。ヨドコウ迎賓館は、ライトが帝国ホテル建築のために来日していた1918年に設計され、日本に現存するライト建築4件のうち、現在まで建築当初の姿を留めている唯一の住宅となっている。

淀川製鋼所は1947年に当館を取得し、1970年代に保存を決定。1974年の重要文化財指定後、保存修理工事を経て1989年6月に「ヨドコウ迎賓館」として一般公開を開始した。