岡山大学、がん抗原の構造安定性と自己抗体の認識様式の相関関係を解明
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の宮本愛助教と二見淳一郎教授らの研究グループは、肺がん患者の血液中の自己抗体が認識するがん抗原の特徴が、抗原の構造安定性と密接に関係することを明らかにしました。抗原の構造安定性が低いほど自己抗体は配列エピトープを強く認識することを発見したとしています。この知見は、高精度ながん診断薬開発に向けた重要な指針になると期待されています。
自己抗体バイオマーカーの特徴と研究の背景
自己抗体は、体内の自分自身のタンパク質に結合する抗体です。健常人の血中には僅かしか存在しませんが、腫瘍に対する免疫応答が続くと、がん細胞内で異常に発現するタンパク質(がん抗原)にB細胞が反応し、さまざまな自己抗体が血中に現れます。これらは、がんに対する免疫応答の履歴や活動レベルを映すバイオマーカーとして、早期診断や免疫治療の効果予測への応用が期待されています。

研究グループはこれまでに、がんと相関する自己抗原を130種類以上同定し、自己抗体を網羅的かつ精密に測定する系の整備を進めてきました。しかし、その約8割は不安定で凝集しやすい性質を持っていました。

構造安定性と自己抗体の認識様式の相関関係
研究グループは、不安定な自己抗原は死んだがん細胞から漏れ出してB細胞に認識される時点で、多くが立体構造を失った変性状態や分解された状態にあると考え、自己抗体は主に「配列エピトープ」に結合すると予測しました。
そこで、肺がん患者の血清で頻繁に観察される11種類の自己抗体をモデルに、立体構造を保ったnative抗原と、変性・可溶化したS-カチオン化抗原への結合の違いを調べました。その結果、抗原の構造安定性が低いほど「配列」を強く認識するという相関が見つかりました。自己抗体の測定において、抗原の構造安定性を考慮して設計することが重要であることが示されています。
診断薬開発への応用と期待

岡山大学が独自開発した「S-カチオン化」技術は、配列エピトープを認識する自己抗体バイオマーカー測定に有利であり、診断薬開発への応用が期待されています。
研究グループの宮本助教と二見教授は、自己抗体が持つ情報をより正確に捉える技術開発を進めることで、がんの早期診断や個別化医療の実現に貢献するとしています。
発表論文の概要
発表された研究成果の詳細は以下の通りです。
- 論文名:Conformational stability and domain‐specific structural features of tumor autoantigens regulate autoantibody epitope propensity
- 掲載誌:Protein Science(2026年9月23日付で掲載)
- 著者:Ai Miyamoto, Rika Yamamoto, Ryui Sakaguchi, Rikako Kutsuma, Takeru Mori, Mirei Masui, Tomoko Honjo, Midori Futami, Mariko Morii, Hiromi Watanabe, Tadahiro Kuribayashi, Kadoaki Ohashi, Katsuyuki Kiura, Junichiro Futami
- DOI:https://doi.org/10.1002/pro.70808
本記事は国立大学法人岡山大学の発表をもとに作成しました。



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