Dellows News

醍醐寺文書聖教が国宝追加指定へ 日本女子大学の全点調査で学術的価値が明確に

文化庁の文化審議会は令和8年3月26日(木)、文化財分科会の審議・議決を経て、真言宗醍醐派総本山・醍醐寺(京都市)が所蔵する「醍醐寺文書聖教」を国宝に追加指定するよう文部科学大臣に答申しました。今回の追加指定により文書24,788点および附文書聖教箱711合が国宝に加わり、総点数は94,192点、附文書聖教箱711合となって国宝として最も点数の多い史料群のひとつとなります。この指定には、⽇本⼥⼦⼤学(東京都⽂京区、学⻑:篠原聡⼦)の文学部歴史文化学科が文化庁の委託を受けて12年にわたり主導してきた調査・研究成果が大きく寄与しました。

日本女子大学による12年間の全点調査と国宝指定

⽇本⼥⼦⼤学における醍醐寺文書聖教の研究は、1990年に永村眞名誉教授(元文学部史学科教授)が着任し、醍醐寺からの研究費提供を受けて史料データベース構築を開始したことが起点となっています。研究基盤は現在、文学部歴史文化学科の藤井雅子教授へと引き継がれています。

同大学は2013年度から2024年度まで文化庁の正式な委託を受け、調査主体として全点調査および目録作成事業を実施しました。これまで約100名の学生や卒業生が参加し、史料目録作成などを担う学修の場にもなりました。大正時代から続いてきた調査・目録作成が2024年3月に完了したことで全体像が初めて明らかとなり、並行して行われた文化庁の確認調査を経て、既指定の史料に559函~815函を追加するなどして総点数94,192点に及ぶ史料群が把握されました。全点調査完了を機に、分散指定されていた重要文化財などが統合され、体系的に国宝へ指定されることが決定しました。

藤井雅子教授は、膨大な史料の国宝指定実現について「第一に所蔵者醍醐寺の文化財調査への深いご理解とご支援、第二に長年にわたり「醍醐寺文書聖教」の調査し、データベース構築に着手された永村眞名誉教授のご功績、第三に本学卒業生を含む数多くの研究者のご尽力や、データベースの入力・目録化・調査補助に参加した本学の学生らの協力に依るものと思います」とコメントしています。

醍醐寺と醍醐寺文書聖教の特徴

醍醐寺は874(貞観16)年に聖宝(理源大師)によって創建された真言密教寺院で、907(延喜7)年には醍醐天皇の御願寺となりました。以後、天皇や貴族、武家などの世俗権力者と深い関係を築きながら、東密小野流の中心寺院として発展してきました。

同寺に伝来する「醍醐寺文書聖教」は、膨大な文書・典籍・聖教類(僧侶の修学活動の中で生み出された書物)から構成されています。平安時代から近代に至る史料が継続して遺されていることや、天皇・貴族の発給文書のほか足利尊氏や豊臣秀吉ら武家との関わりを示す史料が含まれること、寺内経営や支配を表す寺院文書、修学活動に関わる典籍・聖教・版本類が数多く見られることが特徴です。真言寺院に集積された聖教として質・量ともに第一級の存在であり、宗教史や日本史、国文学、古文書学などの多分野で極めて高い学術的価値を持っています。

調査の歴史と国宝指定までの歩み

学術調査は1902(明治35)年に京都帝国大学史料編纂所の黒板勝美氏による予備調査から始まりました。1914(大正3)年以降に本格調査が展開され、1977(昭和52)年からは醍醐寺文化財研究所による調査へと引き継がれました。醍醐寺文化財研究所の所員には永村眞名誉教授や藤井雅子教授のほか、同大学卒業生の関口真規子氏(埼玉県立文書館学芸主幹)や西弥生氏(種智院大学教授)も所属して調査に参加してきました。

文化庁や同大学による調査成果を踏まえた指定の経緯は以下の通りです。

  • 1989年:第1函~100函の史料が重要文化財(醍醐寺文書)に指定
  • 2000年:101函~300函の史料が重要文化財(醍醐寺聖教類)に指定
  • 2010年:500函までの史料が重要文化財に追加指定
  • 2013年:上記を統合し、有形文化財を加えた1~558函(69,378点)が国宝指定
  • 2026年:上記国宝に重要文化財を統合し、有形文化財559~815函を追加し、国宝指定(94,192点)。文書聖教箱(711合)を「附けたり」として併せて指定

10月より記念展覧会を開催

今回の国宝指定完了を記念し、醍醐寺で展覧会が開催されます。『諸国末寺修験官職帳』(国宝・江戸時代)をはじめとする貴重な史料の一部が公開されるほか、寛永行幸から400年を迎える節目にあわせ、俵屋宗達『扇面散図』(重要文化財・江戸時代)や、徳川幕府3代将軍・徳川家光公の念持仏として伝わる『如意輪観音坐像』(鎌倉時代中~後期)も展示されます。

展覧会の概要は以下の通りです。

  • 展覧会名:「醍醐寺文書聖教国宝指定完了記念 国宝 十万点の祈り」-寛永文化と醍醐寺-
  • 会期:2026年10月17日(土)~ 12月6日(日)※無休、但し、行事等の都合により変更の可能性あり
  • 開館時間:9:00~17:00(発券終了は閉館30分前まで)
  • 拝観料:大人600円/中高生400円/小学生以下無料(三宝院・伽藍の拝観料は別途必要、1ヵ所拝観には団体割引無し)
  • お問い合せ:総本山 醍醐寺 TEL : 075-571-0002

本記事は⽇本⼥⼦⼤学の発表をもとに作成しました。

アクセスランキング

今日

1週間