高齢者の睡眠改善で介護費削減の可能性

大阪大学と睡眠改善サービスを提供するNTT PARAVITAは、高齢者の睡眠データを活用した保健指導の費用対効果に関する共同研究の結果を第83回日本公衆衛生学会総会で発表した。

この研究は、非装着型センサー「Active Sleep ANALYZER」で継続的に睡眠を測定し、個別の睡眠レポートを通じて定期的に保健指導を行うことで、介護給付費用にどのような影響があるかを推計したものだ。

研究の対象者は、大阪府堺市在住の65歳以上の独居または老老世帯の104名。介入群には毎月の睡眠データを基にした保健師や看護師による電話介入を3回行い、対照群には睡眠センサーによる測定と睡眠レポートの郵送のみを行った。

約3カ月間の介入前後を比較した結果、介入群において睡眠状態を示す「アテネ不眠尺度」のスコアが大幅に改善したことが統計的に示された。さらに、特に睡眠の質が低い高リスク者に限定した解析では、介入群において「要支援・要介護リスク評価尺度」が改善したことも確認された。

これまでの研究では、要支援・要介護リスク評価尺度が低い群では1点あたり0.89万円、高い群では1点あたり7.53万円の6年間介護給付の費増加が報告されている。この知見を基に、介入群と対照群の差分として、一人あたり約8.5万円の6年間累積介護給付費削減効果があると推定された。

本研究の結果から、高齢者の睡眠データを活用した保健指導により睡眠課題が改善されることで、社会全体の介護費負担軽減に寄与する可能性が示唆された。超高齢社会が進行し、介護費用を含む社会保障費の増大が大きな課題となっている日本において、このような取り組みは注目に値する。

valvix

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