「模倣の壁」を超えて掴んだはんこ屋・岡田商会の逆転劇、笑顔を届けるはんこができるまで
インターネットのはんこ屋さん「印鑑はんこSHOPハンコズ」を運営する株式会社岡田商会。今では人気キャラクターとコラボレーションしたはんこで知られる同社だが、2015年には倒産寸前の危機に直面していた。しかし、あるアイデアをきっかけに、業界の常識を覆す展開を見せることになる。
危機からの再起
1980年に創業した岡田商会は、長年B2B事業として街のはんこ屋に商品を卸す事業を展開。2000年からはネット通販に参入し、一般消費者向けの販売を開始した。しかし、2015年ごろになると会社は重大な危機を迎える。
「当時は他のはんこ屋さんと同じような商品を、インターネットで販売していました」と、創業者の息子であり、現常務取締役の岡山耕二郎さんは振り返る。「価格競争に巻き込まれ、月に1000万円以上の赤字を出す状態だったんです」
転機となった「ねこずかん」
この危機的状況を打開したのが、「ねこずかん」という商品だった。絵が得意な社員が描いた様々な表情とポーズの猫のイラストを使用したはんこシリーズで、従来商品の倍の価格で販売。
発売当初は4本しか売れなかったものの、プレスリリースをきっかけに多くのメディアで取り上げられ、わずか3日間で5000本以上の注文が殺到。この成功を機に、同社は付加価値の高い商品の開発に注力していく。ちなみに「ずかん」というシリーズ名の由来は、企画段階でたくさん並んだ猫のイラストを見て「図鑑っぽいな」と思ったからという、軽いノリだったそう。
「模倣の壁」とIPビジネスへの展開
しかし、「ねこずかん」の成功は新たな課題も生んだ。社内で「模倣の壁」と呼ばれる問題だ。「動物のイラストを使用したはんこは、他社でも比較的簡単に作れてしまう。人気商品になると、すぐに類似品が出てくるんです」と岡山さんは説明する。
この課題を克服するきっかけとなったのは、家族で遊びに行った手塚治虫記念館での出来事だった。そこで岡山さんは、手塚治虫の作品や生涯をかけた仕事への熱意に感動。はんこを通して手塚治虫作品の魅力を世に伝えられないかと、翌日には手塚プロダクションに連絡をとり、ずかんシリーズの一つとして「手塚ずかん」の販売に漕ぎ着けた。IP活用であれば、他社が簡単には追従できない。その後、同社はキャラクターIPを活用したはんこの展開を本格化。現在では、リラックマ、ポケモン、呪術廻戦など、多くの人気IPとコラボレーションを実現している。
PR事業への進出
興味深いことに、同社の変革はここで留まらない。はんこずかんなどの販売で培ったPRのノウハウを活かし、2018年末からはPR事業も開始。他社のPR支援も手がけるようになった。
「当社のPRの成功事例を見た知人から、PR支援の依頼を受けるようになったんです」と岡山さん。現在では、はんこの製造販売とPR事業という、異なる2つの事業を展開している。
最新作は「リラックマごゆるりはんこ」
2024年11月、同社は「リラックマごゆるりはんこ 日付印バージョン(リラックマサーカス限定デザイン)」を発売。サーカス団に扮したリラックマたちが、日付を知らせてくれるデザインが特徴だ。
危機を乗り越え、新たな価値を創造し続ける同社の挑戦は、まだまだ続いていく。
株式会社岡田商会 公式サイト
https://okada-shokai.co.jp/