価格転嫁率が44.9%に、業種間で格差広がる

帝国データバンクが2024年7月に実施した価格転嫁に関する実態調査によると、自社の商品・サービスに対してコストの上昇分を多少なりとも価格転嫁できている企業の割合は78.4%に上った。一方で、全く価格転嫁できない企業も10.9%存在した。

価格転嫁率は44.9%と前回調査(2024年2月)から4.3ポイント上昇したものの、依然として5割以上をコスト上昇分として企業が負担している状況だ。業種別では、「化学品卸売」(65.0%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(63.0%)などで6割を超える一方、「医療・福祉・保健衛生」(19.8%)、「娯楽サービス」(21.7%)、「金融」(25.8%)、「農・林・水産」(27.3%)などでは低水準にとどまった。

サプライチェーン別の動向を見ると、全般的にやや価格転嫁は進展しているが、川下に位置する「飲食店」(36.0%)や「飲食料品小売」(40.9%)では前回調査から転嫁率が後退するなど、業種間で格差が広がりつつある。

企業からは、「価格高騰がユーザー目線でも一般化してきたため、価格転嫁が進んでいる」といった声がある一方で、「これ以上の価格転嫁は厳しい」との声も多数寄せられており、進み出した価格転嫁が頭打ちになる可能性もある。

政府の価格転嫁に対する支援は一定の成果を上げているようだが、現状を打破するためには、原材料の安定供給に向けた政策や賃上げの支援を継続しつつ、購買意欲を刺激する大規模な減税など収入の増加につながる多角的な経済施策が必須となるだろう。