遺伝子組み換え作物の流通30年 安全性や社会制度を巡り多角的に議論
バイテク情報普及会と食品安全情報ネットワークは、2026年9月10日(木)に日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホールにて「遺伝子組み換え とことんディスカッション」を開催しました。日本で遺伝子組み換え作物の流通が始まって30年を迎える中、食料安全保障や環境問題、農家の選択、メディアの役割などをテーマに多角的な議論が交わされました。


品種改良の歴史と安全性評価の仕組み
前半の講演では、東洋大学食環境科学部食環境科学科 客員教授の田部井豊氏が登壇し、品種改良の基本や安全性評価の仕組み、世界での利用状況について解説しました。田部井氏は、日常的に消費されている野菜や穀物も長年の品種改良によるものであるとし、交雑育種や突然変異育種、ゲノム編集などとの違いを示しながら、遺伝子組み換え技術を「品種改良の一つの技術」と位置づけました。


1996年に除草剤耐性大豆や害虫抵抗性トウモロコシなどの商業栽培が開始されて以降、世界の栽培面積は拡大し、2025年には約2億1,600万ヘクタール(日本の国土のおよそ5.7倍)に達したと説明されました。安全性に関しては、日本国内では生物多様性への影響、食品および飼料としての安全性が法令に基づいて審査されていることが紹介されました。また、既存食品と比較して新たなリスクが増えていないかを評価することが基本であると述べ、農薬使用量の削減や不耕起栽培による土壌保全、単位面積当たりの収量向上といった環境面・食料安全保障面での役割にも言及しました。


農業現場の実態と生産者の選択肢
続いて、科学ジャーナリストで食品安全情報ネットワーク共同代表の小島正美氏が、30年以上にわたる取材経験をもとにメディア報道と市民運動について講演しました。かつては自身も批判的な報道を行っていたものの、米国やフィリピンなどの農業現場を取材し、農薬削減や収量増加、重労働からの解放を実感する農家の声に触れたことで見方が変わったと振り返りました。


小島氏は、フィリピンの1~2ヘクタール程度の小規模農家における所得向上や、米国で取材した3家族で2,225ヘクタールを経営する農家の事例を挙げ、技術の恩恵を紹介しました。一方で、日本で国内栽培が広がらなかった要因として市民運動や自治体の規制、メディア報道などを挙げ、海外から家畜飼料や加工食品原料として大量に輸入しながら国内生産に反対が起きる構造を指摘し、技術を利用したい農家にも選択肢が必要であると提起しました。

賛否の対立を超えた社会システムと対話
後半の討論会では、ジャーナリストの須賀川拓氏の進行のもと、経済思想家・東京大学准教授の斎藤幸平氏、小島正美氏、農業法人トゥリーアンドノーフ代表取締役・日本バイオ作物ネットワーク理事長の徳本修一氏が登壇し、約90分にわたり議論を行いました。
徳本氏は、農業経営上の選択肢の一つとしてバイオテクノロジーを捉えているとし、日本の風土や課題に合わせた技術活用の必要性を語りました。斎藤氏は、大規模単一栽培や企業の技術独占といった社会経済的構造に疑問を呈しつつ、小規模農家の課題解決に公的機関が関与して技術を活用する事例などに触れ、「単に遺伝子組み換えそのものがいいか、悪いかというだけの話ではなく、どういうシステムで使うのか」という視点の重要性を示しました。討論を通じて、ゼロサムの対立にとどまらず、科学的根拠や現場の実態、制度設計を踏まえた継続的な対話の重要性が確認されました。

- イベント名:『遺伝子組み換え とことんディスカッション』
- 開催日:2026年9月10日(木)
- 会場:日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(東京都千代田区日比谷公園1-4 地下1階)
- 主催:バイテク情報普及会、食品安全情報ネットワーク
本記事はバイテク情報普及会および食品安全情報ネットワークの発表をもとに作成しました。
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