千葉大学や東京科学大学、混合曝露の解析手法SGL-WQSを開発
千葉大学予防医学センターの江口哲史講師、髙口倖暉特任助教、鈴木規道准教授、東京科学大学情報理工学院らの研究チームは、複数の化学物質にさらされる混合曝露をグループと成分の両面から解析する新統計手法「Sparse Group Lasso Weighted Quantile Sum regression(SGL-WQS)」を開発した。同じ化学物質群に正方向と負方向の関連が混在する場合でも一つのモデルで扱い、追加検討の候補となるグループや成分を整理できる。本研究成果は、2026年8月25日に国際学術誌「Environment International」で公開された。
開発の背景と既存手法の課題
人は食事、空気、住環境、日用品などを通じて多くの化学物質に同時に接している。こうした複雑な環境において、どの化学物質や化学物質群が健康指標と関連しているかを適切に評価することは容易ではない。
環境保健研究では、これらの化学物質を構造・用途・発生源などに基づいてグループ化して解析するが、同じグループの中でも健康指標との関連方向が異なり、成分同士が強く相関することがある。従来の既存手法では、事前のグループ構造、グループ内の正負両方向、成分の絞り込みを同時に扱うことに限界があった。
新手法「SGL-WQS」の特徴と評価
新たに開発されたSGL-WQSは、グループとその中の成分を考慮するSparse Group Lasso(SGL)と、複数の化学物質の曝露量を共通尺度に変換して重み付けするWeighted Quantile Sum(WQS)回帰を組み合わせた統計手法である。事前に設定した化学物質群を保ちながら、同じ群内の正方向・負方向の指標と群内成分を一つのモデルで整理できる強みを持つ。
一方で、化学物質数が多い場合や関連が弱い場合には個々の成分の絞り込みが難しく、確認用データの結果も探索的に解釈する必要があるという限界も示されている。研究チームは、標本数・化学物質数・グループ構成などを変えたシミュレーションと米国全国健康・栄養調査(NHANES)公開データで動作を確認し、他の研究者も利用できる解析用Rパッケージと再現コードを公開した。
研究チームの展望
研究チームは、一度の測定で多数の化学物質を分析できるようになった現在、化学的に意味のあるグループを保ちながら着目すべきグループや方向、成分を整理する解析が重要であるとしている。今後はSGL-WQSを一つの選択肢として、より多様な研究デザインへの拡張とともに、シミュレーションだけでなく実データでの安定性評価を進めたいとしている。
論文および研究プロジェクト情報
- タイトル: Sparse Group Lasso Weighted Quantile Sum Regression for Analyzing Chemical Mixture Effects: Bidirectional Effect Estimation with Two-Stage Group-Level Evaluation
- 著者: Takayuki Kawashima, Kohki Takaguchi, Norimichi Suzuki, Akifumi Eguchi
- 雑誌名: Environment International
- DOI: 10.1016/j.envint.2026.110480
- 解析用パッケージURL: https://github.com/siero5335/sglwqs
- シミュレーションコードURL: https://github.com/siero5335/sglwqs_Simulation
本研究は、環境再生保全機構 環境研究総合推進費(JPMEERF20245M01)、日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(22K17859)、株式会社山田養蜂場 環境予防医学寄附研究の支援を受けて実施された。
本記事は千葉大学および東京科学大学らの研究チームの発表をもとに作成。
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