なんばパークスが都心の生物多様性に貢献

株式会社大林組と南海電気鉄道株式会社は、大阪市の複合商業施設「なんばパークス」の屋上公園「パークスガーデン」において生物調査を実施した。その結果、全国的に個体数の減少が危惧されているスズメの繁殖が確認されるなど、多様な生物が生息し、繁殖していることが明らかになった。

「なんばパークス」は2007年4月に全館開業した大型複合商業施設で、「パークスガーデン」は施設のグランドレベルから地上9階まで段丘状に続く、約500種類10万株の豊富な植物が生育する都市の屋上公園である。設計段階から湿地や草地などの多様な環境を設け、鳥類の飛来促進のため実をつける樹種を豊富に植栽するなど、生物多様性に配慮した取り組みを行ってきた。また、農薬を使わない管理や、鳥の餌になる昆虫類を一部残すなど、20年以上にわたって生物や植物に向き合った管理を続けている。

2022年度から2023年度の2年間で行われた定量調査では、パークスガーデンで11種の鳥類が確認されたのに対し、敷地内の街路樹では5種のみだった。これにより、パークスガーデンの存在が鳥類の多様性向上に寄与していることが示された。また、キビタキやメボソムシクイ上種などの渡り鳥も確認され、パークスガーデンが渡り鳥の中継地になっていることも判明した。

昆虫類調査でも、9目64科171種が確認され、その中には大阪府レッドリスト2014の準絶滅危惧(NT)であるマイコアカネや、都市では局所的にしか見られないハナバチ類なども含まれていた。

藪や水場などの多様な環境、豊富な植物、生物に配慮した長年の運営管理などが、パークスガーデンの生物多様性に大きく貢献していると推察される。両社は今後もパークスガーデンの緑地管理と定期的なモニタリングを継続し、大阪難波の”都心の森”を維持していくことで、生物多様性の保全に貢献していく方針だ。

なんばパークスでは、ヒートアイランド現象の緩和や水管理の徹底など、環境に配慮した取り組みも行われている。2023年5月には「CASBEE不動産Sランク」を取得し、環境性能の高さも評価されている。