漬物店の廃業増加、故郷の味存続の危機
日本の伝統的な食文化である漬物の存続が危ぶまれている。帝国データバンクによると、2024年1月から9月までに、野菜類を原料とした漬物を生産・販売する「漬物店」の倒産が8件、休廃業・解散が18件発生し、計26件が市場から消滅した。この数字は前年の通年件数を既に上回っており、年間で過去最多となる可能性がある。
漬物店を取り巻く経営環境は厳しさを増している。食の嗜好多様化、原材料野菜の価格不安定、経営者や就農者の高齢化という「三重苦」に直面しているのだ。健康志向の高まりで注目度は高まったものの、消費量は20年で3割超減少。原材料や調味料、人件費、配送費、資材費などのコスト高も収益を圧迫している。さらに、漬物店の代表者の約6割が60代以上で、平均年齢は61.6歳と全産業平均を上回る。
今年6月からの食品衛生法の改正・施行で、漬物製造が保健所による営業許可制となったことも追い打ちをかけた。衛生基準に合致した加工所の整備など巨額の設備投資費用を迫られ、リタイアを決断する生産者が少なくないとみられる。
一部の自治体では、故郷に伝わる漬物の味を守るため、生産者の設備資金に補助金を支給するなどの動きもあるが、道の駅や直売所などで漬物製品の入荷が途絶えるケースも出ている。水面下でより多くの生産者が廃業などを選択している可能性があり、地域ごとに特色のある漬物文化の衰退や規模縮小が懸念される状況だ。