下北沢病院の久道勝也医師ら、歩行医学Gait Medicineを提唱
東京都世田谷区にある下北沢病院の久道勝也医師ら研究チームは、歩行を身体機能だけでなく環境や心理社会的要因、社会的な意味との相互作用から捉える医学的・公衆衛生的枠組み「Gait Medicine(歩行医学)」を提唱しました。歩行に関わる問題を統合的に捉える概念的・臨床的枠組みを示しています。本枠組みを提示した論文は、国際学術誌「Frontiers in Public Health」に掲載されました。
歩行を一つの現象として捉える背景
歩行は日常生活や社会との関わりに不可欠な営みですが、従来の医療では整形外科や皮膚科、循環器領域、糖尿病診療、神経内科、リハビリテーションなど各専門領域に分かれて対応されてきました。
しかし、人が歩き続けられるかどうかは身体状態だけでなく、足に合った履物や道路・住環境、外出の目的や人とのつながり、歩行への不安といった環境的・心理的・社会的要因にも影響を受けます。そのため論文では、歩行を個別の疾患や身体機能だけでなく、一つの臨床・公衆衛生上の現象として統合的に捉える必要性を提起しています。
Gait Medicineを構成する3つの層と相互作用
Gait Medicineは、歩行を主に以下の3つの層とそれらの相互作用から捉える枠組みです。
- Somatic(身体):筋肉、骨・関節、神経、皮膚、血流など、歩行に関わる身体の状態
- Environmental(環境):履物、道路、住環境、交通手段など、歩行を支えたり妨げたりする環境
- Meaning(意味・社会的文脈):歩く目的や家族・友人との関係、仕事や社会参加、心理的要因など、歩行が持つ意味や社会的背景
これらは互いに影響し合っており、身体機能が十分でも不安や道路環境によって歩行機会が減ることもあれば、身体的制約があっても適切な履物や環境、目的によって歩行が支えられる場合もあります。本枠組みは、臨床医学と公衆衛生、さらには社会との接点を考える共通基盤を目指しています。
実証研究を通じた検証と展開
今回提示された枠組みについて、下北沢病院理事長の久道勝也医師は、別々に議論されがちだった領域をつなぐ共通の枠組みとして提案したとした上で、今後はさまざまな分野の研究者や医療者とともに実証研究を重ねて検証したい旨を述べています。
今後は、この枠組みに基づく評価や介入が歩行機能や生活の質、社会参加などの結果とどう関連するか、臨床や公衆衛生の現場でどう活用できるかについて実証研究が進められる予定です。
論文情報
- 論文名:Gait Medicine: An Interdisciplinary Field Centered on Walking as a Vital Sign
- 著者:久道勝也ほか
- 掲載誌:Frontiers in Public Health
- 掲載日:2026年9月7日(月)
- 記事ID:1895889
- 論文DOI:10.3389/fpubh.2026.1895889
- 論文URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2026.1895889
本記事は医療法人社団青泉会 下北沢病院の発表をもとに作成しました。
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