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バルーン肺動脈形成術の安全性と症例数の関係を検証 順天堂大など

順天堂大学医学部循環器内科学講座の相川忠夫 助教、末永祐哉 准教授、上木裕介 助教、南野徹 教授と日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の研究グループは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するカテーテル治療であるバルーン肺動脈形成術(BPA)について、施設・術者それぞれのBPA件数とカテーテル治療関連合併症の関係を全国レジストリーで検証しました。解析の結果、重篤な合併症はまれであった一方、安全性と症例数の関係は単純なものではなく、症例数だけで安全性を評価することには限界がある可能性が示されました。本研究成果は、米国心臓病学会誌『JACC: Advances』のオンライン版に2026年10月31日付(現地時間)で掲載されています。

全国のレジストリデータから5,403件を解析

CTEPHは肺動脈内に器質化した血栓が残ることで肺血管抵抗が上昇し、息切れや右心不全をきたす疾患です。BPAは狭窄・閉塞した肺動脈をバルーンで拡張するカテーテル治療ですが、高度な技術を要し、喀血・血痰や肺障害などの合併症を生じる場合があります。一般に高難度の治療では症例数が多いほど成績が良いとされる傾向がありますが、BPAにおいて施設や術者ごとの治療件数と合併症の関係を全国規模で検証したデータは限られていました。

研究グループは、CVITが運営するJ-SHDレジストリーを用い、2021~2024年にCTEPHに対して行われた5,403件のBPAを解析しました。その結果、全体の13.9%にあたる751件でカテーテル治療関連合併症が記録されました。その多くは喀血・血痰(4.3%)や画像上の肺障害(7.4%)などの肺合併症でした。一方で重篤なイベントは少なく、カテーテル治療関連死亡は3件、予定外の侵襲的人工呼吸管理は6件、ECMOを要した症例は7件にとどまりました。

施設件数と術者件数の詳細な検証

各BPA実施時点から遡った過去3年間の件数をもとにした主解析では、施設のBPA件数を150件未満と150件以上に分けて術者の件数も同時にモデルへ組み込みました。その結果、3年間でBPA件数が150件以上の施設は150件未満の施設と比べ、BPA関連合併症のオッズ比が高くなりました(調整オッズ比1.60、95%信頼区間1.08~2.36)。一方、術者のBPA件数には独立した関連はみられませんでした。

さらに施設と術者のBPA件数を連続的な指標として追加解析したところ、それぞれを別々に評価した場合にはBPA件数の増加と合併症の増加に関連が認められました。しかし、両者を同じモデルに入れて調整すると、施設(10件増加あたり調整オッズ比1.03、95%信頼区間0.99~1.08)、術者(10件増加あたり調整オッズ比1.02、95%信頼区間0.98~1.07)のいずれも独立した関連はみられなくなりました。また、施設ごとの診断・報告方法の違いによる影響を受けにくい合併症に限定した解析(該当イベント135件)でも、施設・術者の件数ともに統計学的に有意な関連は検出されませんでした。

単純な症例数にとどまらない評価指標の検討へ

これらの結果について研究グループは、症例数が多い施設ほど合併症が多い、あるいは無関係と結論づけることはできず、症例数のみを安全性の指標として用いることには慎重な解釈が必要であるとしています。J-SHDレジストリーでは病変の形態や処置した区域数、バルーン径や拡張方法といった手技の難易度を詳細に評価できないため、未測定の要因が影響している可能性も指摘されています。

相川忠夫 助教は、全国レジストリーの検証により症例数が多ければ多いほど安全という単純な関係ではないことが分かったとした上で、「今後は、病変の難易度や治療方法、多職種による診療体制なども含めて検証することで、BPAをより安全に行うために重要な要素を明らかにしたいと考えています」とコメントしています。今後は患者背景に加え、手技の特徴や治療戦略、チーム体制などを組み合わせた包括的な評価指標の検討が期待されています。

本記事は順天堂大学の発表をもとに作成しました。

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