金利上昇で企業に影響、4割近くが「マイナス」
日本銀行は2024年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除とYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の撤廃を決定した。これによりアベノミクス下で実施されてきた大規模な金融緩和は終了し、金融正常化への一歩を踏み出すこととなった。政策修正を受け、一部の金融機関は預金金利や貸出金利の引き上げに動いている。
帝国データバンクが実施した金利上昇による企業への影響調査(2024年4月)によると、金利上昇により自社の事業に「マイナスの影響の方が大きい」と回答した企業は37.7%で4割近くに上った。一方、「プラスの影響の方が大きい」は2.8%にとどまり、「どちらとも言えない(プラスとマイナス両方で相殺)」が33.2%、「影響はない」が14.4%だった。
「マイナスの影響の方が大きい」と回答した企業からは、借入金利の上昇による支払利息の増加や、取引先の設備投資意欲の低下を懸念する声が聞かれた。業界別では、住宅ローン金利の上昇による住宅購入の抑制が懸念される『不動産』(47.7%)が最も高く、次いで自社設備投資などで借入金の金額が比較的大きい『製造』(42.6%)、『農・林・水産』(41.7%)が続いた。
一方、「プラスの影響の方が大きい」と回答した企業からは、貸出金利回りの改善による収益性の向上を期待する声があがった。また、「どちらとも言えない」と回答した企業の中には、マイナスの影響を見込みつつも過度な円安の抑制効果を期待する声もあった。
金融政策の正常化は長期的には日本経済にプラスの影響が期待できるが、当面は低金利政策が維持されると予想される。ただし、国債の買い入れ減額などに市場は敏感に反応しており、金利上昇圧力は強まっていくだろう。企業には「金利のある世界」に対応できる意識の切り替えと体力の強化が求められる。