リーガルテック、蓄電池の製造や劣化診断AIに関する国内特許動向を調査
東京都港区に本社を置くリーガルテック株式会社(代表取締役CEO:平井 智之)は、特許AIエージェント「MyTokkyo.Ai」を活用し、蓄電池産業における製造・劣化診断AIの技術課題と国内公開特許の動向を調査した。2021年から2025年を対象に30件の検索式を実行したところ、重複を除いて約35件の公報が確認された。出願動向からは、学習に使える劣化や異常データの不足、製造条件と品質を結び付けるデータ設計の難しさが共通課題として浮かび上がっている。
劣化データの不足や信頼性確保が共通の課題
蓄電池関連の特許出願は、SOC(充電率)・SOH(健全度)の推定、熱暴走の予兆検知、中古電池の性能評価、画像を用いた欠陥検査などに分かれている。
調査結果によると、熱暴走や内部短絡は発生頻度が低く実データを十分に集めにくい事象であり、希少な異常を見逃さないモデルの構築にはセンサーの組み合わせや学習データの補完が必要になる。また、電池の種類、使用温度、充放電履歴が変わるとSOC・SOHや残存寿命の推定精度が低下する場合があり、使用履歴が不明な個体も存在する中古電池を含め、診断モデルの汎用性が課題となっている。さらに、混練、塗工、乾燥、プレス、組立などの工程データと、完成後の性能・寿命を一貫して結び付ける対応関係が不十分な場合、AIの予測を歩留まり改善へ反映しにくくなると分析されている。

国内外の主要企業による出願状況
確認された主な企業と技術の方向性として、各社による多様なアプローチがみられた。
SOC・SOH推定では、株式会社デンソーによるインピーダンス計測とガウス過程回帰を組み合わせた出願や、株式会社半導体エネルギー研究所によるニューラルネットワークを用いた残容量推定および異常発熱の画像診断に関する出願が確認された。これらは計測値と推定モデルを組み合わせることで、内部を直接観察しにくい制約を補う技術である。
中古電池の評価分野では、株式会社日立ハイテクによる残価評価・劣化度管理システムや、トヨタバッテリー株式会社による非破壊の電池特性推定が確認された。再利用の可否だけでなく、利用可能な期間や用途を評価する方向へ技術が広がっている。また、製造・検査分野では、エルジー エナジー ソリューションによる電極画像検査AIや外観検査の出願が確認されている。なお、企業名やタイトルに「AI」「機械学習」を直接含める検索では該当件数が限られたものの、これは関連出願の不在を意味するものではなく、公報中の用語や出願人名の表記、IPC分類の付与によって結果が変動するため、確認件数は今回の検索条件の範囲として扱う必要があるとしている。
日本企業における開発機会の考察

同社は、確認された出願動向と技術課題を踏まえた考察として、日本企業にとっての開発機会を挙げている。なお、これは特許の空白、権利取得の可能性、他社権利との抵触を判断するものではないとしている。
中古電池の再利用においては、単一の劣化指標にとどまらず、使用履歴、材料特性、想定する再利用先を組み合わせ、用途ごとに必要な性能を定義して残存価値を説明できる診断モデルに開発余地があるとした。また、画像、温度、ニオイ、電気特性などを組み合わせた複合センシングによる熱暴走の早期検知や、画像検査の判定結果を蓄積して混練、塗工、乾燥、プレスなどの条件と結び付け、不良検出から発生原因の推定へ用途を広げる工程最適化については、日本企業が持つ量産ラインのデータと工程ノウハウを生かしやすい領域であるとみている。
調査の概要
本調査は、リチウムイオン電池と全固体電池を中心とする蓄電池を対象とし、燃料電池は補足事例として参照された。IPC分類H01M、G01R、G06N、G06Tと、劣化診断、SOC、SOH、熱暴走、画像検査、再利用などのキーワードを組み合わせている。
調査の概要および留意事項は以下の通り。
- 検索期間:2021年1月1日から2025年12月31日(2026年公開分は補足事例として区分)
- 公開年別の件数基準:公報の公開年を基準とし、2025年分は公開前の案件を含まない可能性がある
- 確認件数:重複を除き約35件(蓄電池業界全体の出願件数を示すものではない)
- 調査目的:技術動向の把握を目的とし、法的な侵害判断、無効性判断、特許性判断は行っていない
- 主な確認公報:特開2022-109974、特許第7787825号、特許第7639947号、特許第7626258号、特許第7745009号、特許第7934010号、特開2024-170764、特表2025-518251、特表2025-511640(2026年公開の公報は補足事例として参照)
本記事はリーガルテック株式会社の発表および独立行政法人工業所有権情報・研修館「J-PlatPat」の公報情報をもとに作成。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



