富士通、論理推論可能な大規模言語モデル開発へ
富士通株式会社は、経済産業省が推進する国内の生成AIの開発力を強化するためのプロジェクト「GENIAC」のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(助成)」に採択され、論理推論を可能とする大規模言語モデル(LLM)の研究開発を開始する。
富士通は、企業における生成AI活用の課題を解決する業務に特化した生成AIの提供を目指して研究開発を行っている。生成AIの業務活用における大きな課題の一つが、様々な業務のニーズに応じた性能と機能の提供だ。富士通は、「富岳」を用いて学習した日本語能力に優れた「Fugaku-LLM」の開発と提供を行っており、今後も様々な業種や業務に特化した特化型LLMの開発を強化していく予定である。
生成AIの業務活用のもう一つの大きな課題は、信頼性の担保だ。現行のLLMは知識不足の事柄について根拠に基づかないもっともらしい誤りを回答してしまう幻覚(ハルシネーション)が発生することに加えて、LLMが内部パラメータとして保有している知識を把握する手段がないため、信頼性が求められる業務へのLLM導入が進まないことが課題だった。
そこで富士通は、LLMに回答させる時に、必要な業務知識を自然言語ではなく知識処理技術の一つであるナレッジグラフの形式でLLMに追加入力すると、より業務知識に従って回答させられることに着目した。LLMがさらに高度な推論をナレッジグラフに従って進められるようにするために、ナレッジグラフとLLMを融合する新技術の開発に着手し、2024年度中の業務活用の実現を目指す。この新技術は、2023年9月に発表した富士通の幻覚検出技術をさらに強化するものだ。
本助成事業では、知識処理技術の一つであるナレッジグラフの生成と推論に特化したLLMを開発することで、自然言語の規制や規則から生成したナレッジグラフに従ってLLMに回答を論理推論させる技術の実現を目指す。本技術は最終的に、富士通が全社AI戦略として掲げ2024年度中の実現を目指す「出力の不安定性を解消し、条文が長く複雑な法規制や社内規則に準拠した正確な出力を保証する生成AIトラスト技術」の中核技術となる。
本助成事業の成果物である、ナレッジグラフの生成や推論に特化したLLMや、ナレッジグラフ生成や推論タスクの評価スクリプト、その他開発中に得た知見やノウハウなどは、利用したデータやソフトウェアの利用規約、OSSライセンス、著作権などが問題ない形で、Hugging FaceやGitHub、富士通技術ブログ、GENIACコミュニティなどで順次公開予定だ。また富士通のAIサービスである「Fujitsu Kozuchi」に搭載していく。