長岡京病院、出産時の会陰損傷による便失禁に対する会陰体再建術42例の分析を発表
株式会社セントラルメディエンスのグループ医療法人である医療法人総心会 長岡京病院の外科チームは、経腟分娩時の会陰損傷を原因とする肛門括約筋不全(便失禁)に対する「会陰体再建術」42例の治療分析をまとめた。本研究論文は、日本大腸肛門病学会の英文誌「Journal of the Anus, Rectum and Colon(JARC)」に掲載され、2026年10月25日にオープンアクセスで公開された。同院によると、全例で人工肛門を造設せずに1回の手術(一期的手術)で再建を行い、術後6か月の時点で便失禁の重症度スコアに統計学的に有意な改善が認められたという。

3つの形態分類に基づく手術アプローチ
経腟分娩の際に腟と肛門の間にある会陰体が損傷し、十分に治癒しない場合、便失禁や直腸腟瘻が生じることがある。本研究の対象者においても、原因となった出産から手術までの期間は中央値1.9年、最長で約41年に及んでいた。日本の便失禁診療ガイドライン(2024年改訂第2版)などの指針では肛門括約筋を縫合する括約筋形成術などが位置づけられているが、周囲の結合組織である会陰体の修復に関する位置づけは十分に整理されておらず、体系的な評価と治療方針の確立が課題となっていた。
今回の研究は、2022年7月から2025年12月までに同院で会陰体再建術を受けた出産後の肛門括約筋不全(Wexnerスコア4点以上)の女性患者42例を対象とした後ろ向き研究である。損傷の形態に応じて以下の3型に分類された。
- 1型(直腸腟瘻):20例
- 2型(瘻孔を伴わない肛門括約筋不全):14例
- 3型(総排泄腔様変形:腟と肛門が一体化した高度損傷):8例
手術では、肛門括約筋を直接剥離・縫合せず、会陰体から左右に広がる結合組織(会陰体側方伸展部)を確認して中央へ引き寄せ、多層に縫合することで会陰体の構造を再建した。麻酔は下半身の脊髄くも膜下麻酔(サドルブロック)で行われ、全例で人工肛門は造設されていない。
Wexnerスコアの低下と治療成績
便失禁の重症度を示すWexnerスコア(0〜20点、高いほど重症)は、術前平均11.4点から術後6か月で平均3.4点に低下し、統計学的に有意な改善を示した。
スコアが4点以上低下した臨床的改善は42例中40例(95.2%)で認められ、スコアが0点となった例は21例(50.0%)だった。症状が悪化した例はなかった。型別の臨床的改善率は、1型が100%(20/20例)、2型が85.7%(12/14例)、3型が100%(8/8例)となった。2型でスコアが0点となった割合は21.4%と他の型より低く、出産時の神経への影響など構造の修復だけでは改善しにくい要因の関与が考えられている。
手術全体の平均手術時間は約130分、平均出血量は約330mL、追跡期間の中央値は19.8か月だった。主な合併症として麻酔に伴う頭痛9例(21.4%)、創部感染2例(4.8%)、一過性の排尿障害1例が発生したが、いずれも保存的治療で改善した。再手術や永久的な人工肛門の造設、死亡は確認されていない。
本研究の意義と今後の検証課題
本研究は、出産時の会陰損傷による病態を会陰体の損傷という共通のものとして捉え、共通の手術原理による治療の可能性を示したとされる。提案された形態分類は、術前評価や手術計画、インフォームド・コンセントへの活用が期待される。
なお、会陰体再建術は既存の括約筋形成術や仙骨神経刺激療法などを補完し得る治療選択肢の一つとして位置づけられる。本研究は単一施設の後ろ向き研究であり、比較群を設けておらず、他の治療法との比較や長期的な治療成績、生活の質の評価は行われていないため、今後は多施設での前向き研究などによるさらなる検証が必要とされている。
研究責任者である長岡京病院の村上耕一郎医師は、今回の知見が病態への理解と、産婦人科や肛門外科などの連携による診療体制づくりの一助となることを願っている旨を述べている。
医療法人総心会 長岡京病院の概要
- 所在地:京都府長岡京市天神1丁目20-10
- 理事長:村上耕一郎
- 診療科目:内科・脳神経内科・循環器内科・糖尿病内科・外科・消化器外科・肛門外科・整形外科・リハビリテーション科・放射線科
- 病床数:一般病床 97床
- URL:https://www.nagaokakyo-hospital.or.jp/
本記事は株式会社セントラルメディエンスの発表をもとに作成。
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