WAKUが分裂酵母によるグルタチオンの生産・回収を実験的に確認
バイオディープテックスタートアップの株式会社WAKUは、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)を活用した研究開発において、グルタチオンの生産および回収を実験的に確認したと発表した。同社は分裂酵母の特徴的な代謝機能に着目し、高機能素材の生産に活用するための独自技術の開発を進めている。今後は生産性の向上や大量培養技術の開発を進め、農業、食品、ヘルスケアなどの分野で活用できる新たなバイオものづくりの実現を目指すとしている。
産業利用が限られてきた分裂酵母への着目
微生物を利用して有用な物質を生産するバイオものづくりは、医薬品や食品、化粧品、化学品など幅広い産業で活用されている。その中で長年にわたり主要な生産宿主として利用されてきたのが、パンやビールの製造にも使われる出芽酵母である。出芽酵母は発酵産業での利用実績に加え、培養や育種、遺伝子改変などの技術が発達しており、産業上重要な微生物として位置づけられている。
一方、出芽酵母とは異なる生理機能や代謝能力を持つ微生物も数多く存在する。株式会社WAKUが着目した分裂酵母は、出芽酵母とは進化系統が大きく離れており、細胞分裂の方法だけでなく遺伝子の働きや代謝にも独自の特徴を持つ。例えば、含硫機能性分子のエルゴチオネインを自然に生合成する能力があることが知られている数少ない生物の一つであり、その生合成経路も研究により明らかになっている。同社は、これまで産業利用が限られてきた分裂酵母の潜在能力を引き出すことで、従来とは異なる高機能素材の生産技術を確立できると考えている。
対象分子グルタチオンの役割と原料生産への挑戦
開発の対象となっているグルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3種類のアミノ酸から構成される分子である。植物、動物、微生物など幅広い生物の細胞内に存在し、酸化還元状態の維持や環境ストレスへの応答など、生命活動に重要な役割を担っている。
食品、医薬品、化粧品などで利用されてきたほか、近年では植物の生理機能に働きかける農業用バイオスティミュラントとしての活用も進む。株式会社WAKUはこれまで、グルタチオンを活用した農業資材「WAKUFUL」の研究開発と社会実装を進めてきた。今回の取り組みでは、グルタチオンを利用するだけでなく、その原料となる分子そのものを微生物によって生み出す技術の開発を進めている。
培養と分析を通じて生産と回収を確認
株式会社WAKUでは、分裂酵母を用いた菌株開発、培養技術および物質回収技術の研究を進めており、今回、分裂酵母を培養して得られた試料を分析した結果、グルタチオンの生産および回収を確認した。
分裂酵母によるグルタチオンの生合成自体は過去の学術研究でも知られているが、同社は実用的な物質生産へと発展させることを目指し、菌株の改良から培養、回収に至る技術開発を行っている。今後は生産効率の改善、培養規模の拡大、品質の安定化、生産コストの低減といった産業化に向けた技術課題に取り組む方針だ。
多様な高機能素材の生産へ向けた展望

今回のグルタチオン生産は、株式会社WAKUが目指す分裂酵母によるバイオものづくりの第一歩と位置づけられている。同社は単一の分子の生産にとどまらず、分裂酵母の代謝機能を活用して多様な高機能素材を生み出すことを目指している。
今後はグルタチオンの生産性向上やスケールアップを進めるとともに、分裂酵母が持つ特徴的な生合成経路に着目した新たな分子の探索や開発にも取り組む。農業分野で培ってきたグルタチオンの研究開発を起点に、食品、ヘルスケア、化粧品、医薬品などへの応用可能性を検討し、分裂酵母を活用した新たな産業の創出を目指すとしている。
株式会社WAKUの概要
福島県南相馬市に拠点を置く株式会社WAKUは、グルタチオンを活用した農業資材や、分裂酵母を基盤とする高機能素材の研究開発などを手掛けている。
- 会社名:株式会社WAKU
- 所在地:福島県南相馬市(支店・工場:岩手県花巻市)
- 代表者:代表取締役CEO 姫野亮佑
- 設立年月:2022年7月6日
- 事業内容:グルタチオンを活用した農業資材および分裂酵母を基盤とする高機能素材の研究開発・製造・販売
- URL:https://wakuwakudriven.com/
本記事は株式会社WAKUの発表をもとに作成。
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