JPXと日立、金融市場の取引システムにおいて、運用監視業務にAIを本格適用開始
JPX取引システムで日立の生成AIアシスタントを本格適用、運用業務の属人化解消へ CATEGORY: テクノロジー
株式会社日本取引所グループと株式会社日立製作所は、運用業務の属人化解消と生産性向上を目的に、国内金融市場の取引システムにおいて「JP1 Cloud Service 生成AIアシスタント」の本格適用を10月より開始しました。
株式やデリバティブ商品などの取引を担う40以上のシステムを24時間365日体制で集中監視する業務に導入されます。アラート発生時にこれまで熟練者が経験に基づいて選定していた対処手順をAIが適切に絞り込み、オペレーターによる迅速かつ的確な初動対応を可能にします。
日本取引所グループが運営するシステムは、株式やデリバティブ商品の取引および相場情報を取り扱う金融市場の基盤であり、安定稼働が求められます。障害発生時には影響範囲や対処方針を迅速かつ的確に判断する必要がありますが、これまでは長年にわたり蓄積された運用ノウハウや専門知識に依存していました。
近年はシステムの高度化や複雑化が進む一方でIT人財の不足が深刻化しており、熟練者のノウハウ継承や運用品質の維持、持続可能な運営体制の構築が喫緊の課題となっていました。日立製作所は日本取引所グループのシステム運用業務を20年以上にわたりJP1シリーズで支援しており、両社は2022年から将来の運用業務の高度化に向けた検討を進めてきました。
PoCで判断精度97%以上を達成、属人化を解消
実運用を想定したPoC(概念実証)では、アラート発生時のAIの判断精度97%以上(1,600件以上のテストケースにおいて、AIが正しい対処手順候補を絞り込んだ割合)を達成しました。日本取引所グループが対象システムで蓄積してきた1万件以上のインシデント事例と対処手順を活用し、約1,600件のテストケースをもとに検証、評価、改良を重ねた結果です。
AIの回答に判断根拠を提示する機能やプロンプト補助機能、対処手順の絞り込み精度を高める機能の実装・チューニングを行い、成果をJP1の製品機能へ反映することでハルシネーションを抑制しました。

アラート発生時に関連する対処手順や判断根拠が提示されるため、着任して間もないオペレーターでも安定した品質で業務を担当できるようになり、業務の属人化解消と持続可能な運営体制の構築を目指します。なお、「JP1 Cloud Service」は止まらないAI運用と安全な自律運用を支える「HMAX AI Operations」のラインアップの一つです。
次世代運用モデルへの発展と今後の展望
日本取引所グループは今後、現在は人が対応している障害時の初動切り分けや後続の対処業務へのAIエージェント適用を進めるなど、人とAIが協働する次世代の運用モデルへと発展させ、長期ビジョン「Target 2030」の実現に向けた市場インフラの高度化を目指します。
日立製作所は、AIエージェントによる開発、予兆検知、大量アラートの自動振り分けといった運用高度化を見据えて日本取引所グループを支援するほか、本取り組みで得られた知見を「HMAX AI Operations」の高度化にも活用するとしています。
発表企業について
本取り組みに関わる両社の概要は以下の通りです。
- 株式会社日本取引所グループ:東京証券取引所、大阪取引所及び東京商品取引所を運営する総合取引所グループ。長期ビジョン「Target 2030」に基づき「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」への進化を目指す(URL: https://www.jpx.co.jp/)。
- 株式会社日立製作所:IT、OT、プロダクトを活用した社会イノベーション事業を展開。2025年度(2026年3月期)売上収益は10兆5,867億円、2026年3月末時点で連結子会社606社、全世界で約29万人の従業員を擁する(URL: www.hitachi.com/ja-jp/)。
本記事は株式会社日本取引所グループおよび株式会社日立製作所の発表をもとに作成しました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



